NiagaraGreen

メジャー 第2シリーズのNiagaraGreenのレビュー・感想・評価

メジャー 第2シリーズ(2005年製作のアニメ)
5.0
シリーズ最高傑作である。


第二シリーズはアニメオリジナル補完が神がかったシリーズだ。満田拓也という作家は非常に雑な作家といえるが、そこをNHKエンタープライズがあまりにうまく拾っている。

1軍対2軍の話だ。榎本をただの名前だけの人物として終わらせず、眉村がもはや原作に対する的確な指摘である「佐藤におんぶに抱っこで何が打倒海堂だ」ということを言ってのける。満田拓也が筋を通せてない部分をしっかり通すことで、茂野吾郎が筋を通せるようになり、そりゃ海堂出ていくわ、と納得できる作品に仕上がっている。原作で得られなかったカタルシスに近い何かを、アニメでは感じることができるのである。

また、この第二シーズンはハリポタでいうアズカバンの囚人みたいなもので、作中における吾郎がかかった呪いのような存在が登場しないシリーズである。それはハリポタにおけるヴォルデモートであり、メジャーでは吾郎が怪我で死にかけながら投げ続けてみんなが泣き叫ぶというものだ。一方本シリーズでは、ただただ吾郎が、野球そのものの上達に励み、野球の力で理不尽に立ち向かっていく。野球の面白さそのものを感じることができる稀有なシリーズだ(野球アニメなのに)。

別の側面から作品を概観しよう。「吾郎・寿也激闘編」とサブタイトルが付いているように、佐藤寿也との関係性がクローズアップされるシリーズである。メジャーはクィアリーディングがもっとなされるべき作品である。そして佐藤寿也について、きちんと考えなければならない。佐藤寿也という人物の境遇を踏まえた上で吾郎との関係性を読み解こう。吾郎の呪いがケガならば(おとさんも、怪我で死んだ)、寿也の呪いは捨て子であることで、それは野球にまで影響を及ぼす。吾郎にまで捨てられてしまったら自分は。勝てば辞めていくって宣言してる「やつ」の球なんか受けたくもなかったよ、離れていく人への文句をようやく言葉にできたこと。歪んだ愛情が溢れ出てしまった中学時代を踏まえて、桜庭から放ったホームランを見る。「昔からあのままの、立ち止まらない君だから好きなんだ」。誰かが自分から離れていくことをホームランを打つことで乗り越える。さんざん満田をdisりましたがとんでもない筆致である。この作品は"DRAMATIC BASEBALL COMIC"だ。生も死も、もちろん成長も全て野球を通して描かれる。

メジャーの主人公は吾郎で、基本的に吾郎を中心に描かれるので物語は文学とはかけ離れた価値観で展開される。ところが、佐藤寿也が明確に主役になる瞬間が何度かあり、その瞬間この物語は読み解く価値のあるものに変わる。そこを逃さず紐解いていくことで、この物語の真の姿が見えてくるのである。