針鼠

昼と夜の針鼠のネタバレレビュー・内容・結末

昼と夜(2020年製作のドラマ)
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このレビューはネタバレを含みます

2023/01/22 netflix  全16話 ★★★☆☆

お話自体は滅茶面白かった。何よりも「常人を遥かに超えた超人的な頭脳の持ち主」設定の人物が登場して「この人ホントに超人だわあ」と納得できることって滅多にないのだけど、このドラマの主人公の描き方は完璧。超人が凡人に溶け込んで、つまり能力を発揮しつつもそうとは悟られず、警戒されずに頼られて暮らすってこういう感じなんだなあと納得。

でも一方の「FBIから来た人」が全然優秀に見えなくて、むしろ頭悪過ぎ感の方が強くて見ていて困ってしまった。

殺害が目的だったらわざわざ5人目を火災から助ける必要はなく見殺しにすれば済んだだけだったのに?とか、自分も死ぬかもしれない危険を冒してまで見殺しにしないで、改めて自分で殺せるような状況をわざわざ作る、つまり自分が犯人と名指しされるような状況をわざわざ作って殺そうとするのはなぜか? とか、心理分析の専門家なのにそこらあたりの分析を殆どスルーしてるし、何よりも、彼女の理屈から見て、もっと怪しい人がもう一人いるのに全く気が付いていない。

「火災で殺すつもりだったが失敗したために改めて、自らが提案して、5人目に自分が近寄れる状況を作った」という可能性のある、もう一人の真犯人候補、四角い顔のジャーナリストの存在をすっかり忘れている。

えっジャーナリストが心理療法が行われた部屋に侵入したときの様子からいって彼は違うでしょ? と思った方、ドラマの視聴者と違って、FBIの彼女はその様子を実際に見たわけじゃないのよ。ジャーナリストから聞いただけ。本人の言い分があるだけでその言い分が事実に即しているというエビデンスはない。元FBIの心理分析官がエビデンスのない本人の自己申告をまるっと信用してどうするの? 

また心理療法が行われた部屋から押収されたパソコンにソンミンの指紋があったのだから、ソンミンも心理療法を受けていた可能性は残るのだけれど、元FBIの彼女は、心理療法を施したのが命の恩人の警官だったら、いくら命の恩人とはいえ、ソンミンが心理療法士を詐称した警官を全面的に信用なんてするわけがないとは思わなかった?  

心理療法を施したのが警官ではなく別人だったとしても、その別人が共犯であるのは明らかなのだし、共犯を放置していいわけなんかないんだから、ソンミンから事情聴取して、共犯の似顔絵を作るべきだった。

そしてもしソンミンにその手の心理療法を受けた記憶が無ければ、誰が・どんな方法で・どんな理由で、パソコンにソンミンの指紋を残したのか追及すべきなのに、そこらへんのことを何一つやっていない。

つまり元FBI(それもチームリーダーだった経歴あり)なのに、パソコンから検出されたソンミンの指紋に関する捜査は、ソンミンに何も問いたださず、他のことも一切何もしていない。優秀には全然見えない。

結論。「頭が良い女」をきちんと描けるドラマは滅多にない。男の描く「頭の良い女」はだいたいにおいて「頭のあまり良くない男と比べればまあまあ頭が良いと言うことが出来る『女にしては』頭が良いレベル」でしかない。
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