utako

ボードウォーク・エンパイア 欲望の街 シーズン4のutakoのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

前半はマーガレットと子供たちの出番も話題も殆どなく別居スタートのナッキー。リスクより安定の姿勢そのままに、激動のアメリカを生き抜く展望を画策し始めるSですかね。

そんな矢先、前Sからの約束でナッキー出資でクラブオーナーとなる黒人チョーキー。舞台歌手の手配で初登場したナルシスがアトランティックの闇取引に大きく絡んでくる。黒人内での利権争いで戦争になりかけ、ナッキーが多少絡むけど『お前の好きなようにしろ』とかなり消極的。命の恩人なのを忘れたのか?薄情だ!など本音をぶちまけたかと思えば、暗黙の了解で尊重し合えてるこの二人の関係の描き方がなかなか素敵。
友情だろこれは。と思うけど決して友人とは呼ばない。闇社会においては皆ビジネスパートナーであり『誰も信じない』のが鉄則。決断権は自分にしかない。金で満たされても哀愁漂い続けるのは誰もが孤独に見えるからだろうな。

家庭もあり娘の結婚式を目前に控えるチョーキーは、ナルシスとの関係を絶ったクラブ歌手ドーターと逃避行。同郷の黒人でもそれぞれが複雑な事情を持つ移民。アメリカに寄せる想いの相違含め考えさせられるし見応えあります。

ナッキーの弟イーライの長男が、この家系から生まれるかね?くらい超絶美形でビックリだけど、大学でからかわれ仕返しのつもりが同級生を毒殺する結果となり『一生背負っていけ』と父に内緒で尊敬するナッキー叔父さんの金と権力で事後処理してもらう。身内の期待を背負う長男坊であるため大学は卒業する約束だったけど、親友を売ったのはやはり重荷となり退学。結局は叔父や父と同じ道を歩み出そうとするのは因果だな。

警察の捜査も本腰が入り、ナッキーに一番近い執事エディが警察に軟禁され暴力有の自白強要。11年、自らナッキーに忠誠を誓い仕えていた彼にとっては非常に辛い局面だったろう。このあたりのエピソードは結末込みで胸が痛かったし、この件はナッキーに大きな危機意識の一つとなる。
作中一番華やかで妖艶で波乱万丈な女性キャラ、ジリアンも新しい恋を見つけ、やっと不幸の連鎖を断ち切るかのように見せての顛末はかなり衝撃的。夫の遺産への執着…幼妻となった時から運命の歯車は狂っていたんだろうけど、男に狂わされ男を利用し男に翻弄されすぎたジリアンの末路と、証券会社で働き始めるマーガレットの自立した女性像は対比となる。

酒密売と台頭してきたヘロイン売買。薬使用でカポネの暴力性が更にアップ。咥えタバコで笑いながら機関銃を打ちまくるシーンは狂気を通り越して神々しさすらある。頭脳派というより感性で動くタイプで、狂犬的だが仲間の死に怒り泣いたり家族愛に厚い仁義を重んじる魅力的な描かれ方。前Sでも感じたけど見せ場が多いキャラでスコセッシ愛をバリバリ感じます。

アメリカ国内の闇ビジネス網が膨らむ中、各拠点の配下が頭角を現しナッキーも闇社会引退を示唆。世代交代の空気漂う中、最終話グッバイ・ダディはそれぞれ父としてボスとしての区切りが描かれる。
息子の事件を弱味に握られ、闇取引情報を警察に提供していたイーライの顛末。イーライとナッキー兄弟の因縁…弟に裏切られるのは二度目。普段は紳士的なナッキーも筋の通らない事への制裁は冷酷。アトランティックシティを去る覚悟です。シカゴではトーリオ直々にカポネへとバトンが渡り、ニューヨークは新たなイタリア系ファミリー誕生へ。
禁酒法廃止を予期させ、合法的商売を見据えた取引先確保へ…明るい未来は思惑通り訪れるのか?ナッキーの嫁マーガレットも自立し強かに生きているが復縁はあるかな?ファイナルシーズンしかと見届けよう。

主人公に限らずそれぞれの生き様を上手く描いてる群像ドラマだけど、戦場経験から運命的出会いの果て、恩義に応えるかのように新しい家族と新しい生活を歩む覚悟を決め、最後の汚い仕事を終え幸せを掴むはずが…この回のリチャードの描き方はここいち泣けました。
utako

utako