このレビューはネタバレを含みます
女人禁制や横行する体罰など、変化する社会に追随するのを拒絶しもはや「聖域」と化してしまった相撲界。これをぶっ壊すというのが表だったテーマだった。
特に登場するアメリカ帰りの女性記者は第一話で化石のような相撲部屋の男性社会具合にブチギレる。それを見て「相撲界のその辺に真っ向から切り込むんだ!いいじゃん!」と思って見てた。ドラマ時代面白いしピエール瀧の演技も良いしかなりワクワクして2日で全部観た。
「あんなの異常です」と憤慨する女性記者に同伴していた上司の記者も「確かに異常だ」と口を揃える。しかし彼はその後に「でもその異常さを乗り越えないと見えない境地がある」と相撲界の異常性を肯定してしまう。
その後の物語は、どちらかというとこの上司の言葉に準じたものになっていってしまった。そこが超残念。結局、相撲の伝統をぶっ壊すどころか、主人公も記者もどんどん良くも悪くも伝統的な相撲文化にのめり込んでいく。
要所要所で「変わっていかないといけない」というセリフもあって言葉としてはなんとなくリベラルなメッセージも入っているんだけど、物語の構造として伝わるものはどちらかというと
「相撲界も変わっていかないといけないのかもしれないけど、でも相撲ってこれだから面白いんだよね」
だと思う。
実際ドラマとしてはかなりエンタメ性に溢れた良作。魅せ方が本当によい。力士の取組が超カッコいい!
「相撲って面白そう!」って思わせちゃう。いじめだらけでギスギスしていた相撲部屋が仲良しスポコン部屋になっていくあたりも楽しく見れた。実際観た後youtubeで相撲の名試合集とかちょっと観ちゃった。ただ自分が感じたその面白さは危険と隣り合わせな地下格闘技的な側面もあるので面白がっていいのか迷いどころ。
でもやっぱり相撲関係者の協力のもとで撮影してる以上この辺が限界なのかなって感じちゃう。八百長の黒幕がライバルBの母親だったりするあたりも無意識な女性蔑視感があるのかな〜って勘繰ってしまう。
結局何もぶっ壊してはいない。フリで終わってる。うーん。