湾岸に住むランナー

渇水の湾岸に住むランナーのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.5
 映画の中で、太陽や空気はただなのに、なぜ水は金が要るのか……という台詞が出てくる。確かにそうかも。勿論、水の場合は水質を保ち配給してくれる恩恵を受ける訳だから、なにがしかの費用は発生するだろう。嫌なら、川へ汲みにいくしかない。でも、水は天の恵みであるし、人間が生きるのに不可欠なものなのだから、これがただの社会があるといいなとは思う。そして、水や空気と同じように、親の愛は子供にとっても不可欠で、無償に与えられるべきものである。それが、そうなってないケースも多々ある世の中である。

 この映画は、愛を知らずに育ち、愛に飢えながらも愛に臆病な男の、再生の物語。あるいは、生きていく上で最低限必要なものさえ享受していない人たちの存在を描いた作品。そのように理解した。

 クライマックスでの主人公の行動は暴挙、あるいは愚行と言えよう。姉の女の子も言うように『こんなんじゃ、何も変わらない❗』正論である。しかし、それでもそうせざるを得ないこともあるのだろう。それだけ切実だったのだと理解したい。

 「こんなんじゃ」解決はしない。主人公は世間一般的に見れば人生の落伍者街道まっしぐらであるし、姉妹も前途は多難である。でも、もともとどん底だったわけだし、今は何かが動き始めていて、希望はあるのかもしれない。ラストシーン、主人公の嬉し恥ずかしの微妙な表情から、その変化が感じられる。彼らの次の物語がハッピーエンドであることを願おう。

 (追記)
 「姉妹について」主人公が己を投影し、自らを見つめ直すきっかけになった存在。
 姉役の子役の目が印象的。角度によって、『あまちゃん』の「のん」さんにクリソツ。
 「水鉄砲の男の子について」煮え切らない主人公に喝を入れた?あるいは、昔の自分?
 「生田斗真」精神的に障害を抱えた人物を上手く演じていた。今後も期待。