Tanuki

ゼイ・クローン・タイローン/俺たちクローンのTanukiのレビュー・感想・評価

4.5
Netflix新作。ヤクの売人、売春婦、ポン引きの3人が、街全体を取り巻く“最悪の陰謀”と対峙する。チキンもパーマクリームも政府が仕組んだ洗脳手段!?音楽にファッションにSFモリモリ、センスがずば抜けてて理不尽な暴力と搾取への怒りに溢れた爆イケ映画だった。

ジョン・ボイエガ主演、貧困と裏社会を背景にしたSF映画ということで『アタック・ザ・ブロック』を、構造的差別をSF設定に置き換える点では『ホワイトボイス』を、黒人主人公のハイセンスなジャンル映画アップデートとして『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』も連想。

今作は特にすべての画面、すべての音楽、登場人物の行動や言動すべてがカッコいいと思った。ジョン・ボイエガってもともとカッコよかったけど、今こんなイカしてんだな。ジェイミー・フォックスも個人的にベストアクトだったと思う…!

中でもグリーンのリップでバッチリ決めてるテヨナ・パリスが一番カッコいい。この手のパーティーに女性が含まれるのは嬉しいし、知性と勇気に溢れた頼りになる売春婦!ってところが超良かった。攫われてただ助けられる「女」には甘んじない。そんな展開にも好感。

一個だけ言うと、終盤の突然の恋愛要素は正直好みではないかな。

あとは、『ホワイト・ボイス』も確かそうだったと思うけど、この手の構造的な差別を物語展開に落とし込んだ作品って、「本当の黒幕」=中枢の権力者たちは姿も見せないのが通例になりつつあると思うんだけど、そこにどんな意味があるのかなとか。

その方が物語としては収まりがいいからなのか。たとえばこの映画で打ち砕くべきヴィランになっている人物は「もっと上がいる」って明言してるんだよね。だから意図的なものではあるんだろうけど。直接的な構造の打破は簡単なものではない、戦い続ける…というのが、物語としても実社会の現状からしても、リアリティのある閉じ方だから…ってことなんだろうか。今作は構造を生み出す原因をマイノリティ側の内面、にも見出していて、格差に対する強い怒りを感じる一方で、結構内省的な終わり方をしてるのかな?とかも思ったり。

常にハンディ扇風機を顔に当て続けているキャラがいて、親近感湧いちゃった。あれ、そうだよね?
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