エマ

NOPE/ノープのエマのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.2
《本作はIMAXで観てください!》
この作品を観て感じたのは「IMAXって映像じゃなくて音のコンテンツなんだな」ということ。IMAXで観なかったら恐らくここまで怖くなかっただろうなと感じる程、音による恐怖が大きい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下ネタバレ含みます⤵︎⤵︎

UFOものって今まで何度も観てきているはずなのに、ここまで怖かったの初めてだ。IMAXの技術も相まっての事なのだろうが、いちばん怖かったのはきっとあのUFOが動物的だからだ。従来のUFO映画って攻撃的なUFOも「地球征服」とか「地球滅亡」を狙ってる感じがするけど、この作品においてはそんな欲を感じない。場所も移動しないし、ただ自分のナワバリ内で生きてるだけ。旗とか弱点があるのも生物的で気味が悪かった。

ただメッセージ性がジョーダンピール作品の中でも少し分かりづらさはあったかも。
恐らく①「支配者と被支配者の関係」と②「メディアに対する問題提起」がテーマだったと思うのだけれど。
皆さんはどのように感じたのだろうか。

①に関しては、人間→馬 と未確認飛行物体→人間 といったところだろうか。結局馬目線でいうと人間もプレデターだしね。
目を合わせてはいけないのも、馬が鏡で驚くところも含めて動物的だった。UFOがこころなしか瞳に見えたのは私だけでしょうか?
また、最初に主人公が馬の撮影に行った時、プロデューサー達とは目を合わせていないのも象徴的。弱者は強者と目を合わせてはいけないのだ。チンパンジーは目を合わせて子供と分かり合えそうだったんだけどな。やっぱり上手くいかないんだね。

②に関してのキーワードは「一次情報」だと思う。昨今は「ネットリテラシー」という用語が一般的になるほど情報における信憑性・根拠を見極める能力が必要になっている。初めて馬に乗っての映画に出演した人の名前なんて皆知らないし、一次的な情報等求めていないのだ。
最後のシーンにおいても、テレビ局(?)が「未確認飛行物体だ!」と騒いで撮影している。遠くからしか物事を見ていない人間が情報を世間に知らしめているというメタファーではないだろうか。実際最大限の近さで撮影した人は死んじゃったしね。これも示唆的。

①と②を考慮して浮き出てくるのは「監視」という言葉。作中でも何度か出てくる言葉だけど、我々の社会は相対的強者によって監視される。そしてその恐怖に怯えながら生きていかなければならない。ジョーダンピールっぽさが少ないと感じたけれど、この被監視社会を黒人差別社会に置き換えて考えると合点がいく部分もあるなと感じた。

この監督の上手いところはとにかく余白を残して行くことだと思う。アジアの方の「初恋相手(? 顔が解けてる人)」は何故顔があんなことになっているか分からないし(消化シーンを考えると1度あの人はUFO内に入ってしまっている?)、色々と納得できる範囲で謎が残っているのも良い。
今後の作品もとてもとてと楽しみです。
エマ

エマ