ももすけ

美しい彼〜eternal〜のももすけのレビュー・感想・評価

美しい彼〜eternal〜(2023年製作の映画)
5.0
ドラマシリーズの世界観そのままに、ひらきよの愛の成長を描き切った、ファン納得の傑作となった!!!
星5つは、私自身ファンとしての熱量分1つを上乗せ。ファンじゃないかたの評価は知らん。でもいい。ファンとひらきよで完結できればそれでいいのだ!という意味では、完全無欠の作品!!









以下内容に触れます。(長い)













冒頭10分くらいの、ドラマからの切り取り挿入シーンの的確さがエグすぎて、すでにこの辺で滂沱の涙が溢れる始末。「ああ、そうよこれこれ!これなのよ!」ってなる。

平良と清居、それぞれが「愛する彼」の紹介をするセリフにインサートされるドラマのシーンは、もう私たちファンが幾度となく見てきたはずのものなのに、今初めて体感するかのように重い衝撃でズドンズドンと胸深く撃ち込まれ情緒を抉ってくる。

私がドラマで唯一不満だった、エチュードめいた雑なセリフのシーンもさすがに映画では影を潜めて、きちんと整えられていたのも満足。

何より、脇役の人選が天才的。

和田聰宏さん演じる野口の、偏狭な「聖域」を開放し、被写体に徹底して寄り添う生き方の鷹揚さと、ほんの少しの苦味。

「10代で衝撃デビュー、天才的な演技派女優」が仁村紗和さんという説得力。ただのかわい子ちゃんではないスケール感と、「普通の女の子」たる繊細さを併せ持つ女優として、彼女以外もう考えられない!

このふたりの撮影シーンは圧巻。誰が主役の映画なのかわからなくなるくらいの圧倒的な存在感と迫力。
このシーンがあることで、野口が野村伊兵衛賞を取る写真家であること、安奈が天才女優であること、その人たちに触れて、平良と清居が変わっていくことに、強烈な説得力が生まれた。


小山がメチャクチャ男になってた。
あと、清居のマネジャーさんが、安奈の部屋から去る時に「ちゃんと食べてね…」的な言葉をかけてくの、心配してる思いが溢れてて、いい人みか伝わってくる。
子役さんかわいい。

「ラーメン食べたいぃーい!」のシーンのラーメン食べる野口。晩御飯は絶対出前一丁にしよう決定案件。この上なく美味そうに、キレイに食べ、「ご馳走さん」と言い、片付けまではしない。徒にSNS的ポリコレにおもねる表現を使わず、リアリティある人物像の描出を優先するところも、好ましかった。

野口と平良、師弟コンビの何気なさを装う会話の中に、豪快に見える野口の翳りある繊細さと、平良の「羊の皮をかぶった王様」ぶりが感じとれるのが好き。
そして、ふたりのシーンには、過剰な自意識に苦しめられ硬く萎縮する大輪の花の蕾の苦悩と、それに気づき、暮れかけてきた自らの人生を振り返る先人の哀しみの対比も描かれていて、胸がチクリと刺される。


設楽の描き方として、サイコぶりが弱いのでは?と感じたけれど、今日まで何度か見るうちに、設楽は決して「スペシャルなサイコ」として描かれているわけではなく、愛を履き違えたハンパな利己主義者でしかないのだと、その点で、「平良の方がもっと狂ってる」につながるのだとわかった。
平良が覚醒のシーンは、このままじゃ殺人犯になってしまうと心配になるレベルで、多分清居も同じ心配したのだろうなと、清居の声が届いてホッとした。


素直になりきれなかった高校時代を、やり直すラストシーンはファンタジックで美しく素晴らしい。そして冒頭のシーンに繋がる大ラスのシーンは、演技ではないのではと勘ぐるほど実感のこもった「迎えにいく唇」に完全にノックダウン。
もう、幸せで顔が自然に笑ってくるんだけど。
幸せの円環。eternal。
ももすけ

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