生活はどこまでもノイズに溢れていて、時には自分まで掻き消されそうになる。人は誰しもひとりぼっちで孤独であることなんて分かりきったことで、他人なんてみんな敵とさえ思うこともある。ただの何でもない偶然だと思っていたその瞬間が、実は人生に散りばめられた小さな種だったということにはきっとずいぶん後になって気づくのかもしれない。言葉では伝わらないものが映画にはある。感情がこぼれ落ちる瞬間、目に見えないほどの空気の揺らぎ、ほんの少しの微笑みと虚ろな表情、遠くで響きわたる車の音、それだけで「この人が失った何か」が痛いくらいに伝わる。絶望の中の救いとは、どうでもいいとさえ思っていた他者とのつながりの中に転がっているのかもしれない。何も語らずとも、ただ隣にいてくれる人の存在。人間は完全にひとりでは立ち上がれないことを、映画は映像でやさしく伝えてくれる。絶望も救いも、ひとりでは完結しない。自分自身を、思いがけない出会いを、少しだけでも信じてみたくなる。圧倒的な体験だった。かっこよかった。こういう映画をこれからもずっと観ていたい。