世間からつまはじきにされてきた男女のロードムービー。
男は小人症でゲイなのだが、大切な友人を亡くして失意のどん底。元々の人嫌いに加えてコロナ禍も重なり、誰のことも信じられない。
女は10代の時に宇宙人にアブダクションされた経験があると語るセックスワーカー。「クレイジー」と呼ばれることを嫌う。彼女は再び宇宙人に宇宙へとつれていってもらうために約束の場所へ行きたい。そこで、隣人である男に車を貸して欲しいと申し出る。
男は当然何度も断るが、女が提示した金額につられてともに旅をすることになる……というあらすじ。
二人はそれぞれ、身体と精神にまつわる苦しみと悲しみを抱えている。映画が終わっても、それが解決されるわけではない。
でも、まったくかけはなれた場所にいると思っていた相手が身近にいると感じられるだけで、この惑星で生きていけると思えることもある。
多分、そんな映画だと思う。
地球に生きる、たくさんの「エイリアン」たちに、生き延びようと語りかけるような映画だと思った。
音楽もとてもよくて、どうやら火星の音を加工して取り入れたりしているらしい。そこここに散りばめられたSFマインドが作品を優しく包み込んでいる。
SFとはジャンルではなく、在り方、なのかもしれない。