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マダム・ウェブのRのネタバレレビュー・内容・結末

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2024年のアメリカの作品。

監督は「トースト〜幸せになるためのレシピ〜」のSJ・クラーソン。

あらすじ

ニューヨークで救急救命士として働くキャシー・ウェブ(ダコタ・ジョンソン「説得」)はある時、救命活動中に大事故に巻き込まれて以来、デジャヴのような奇妙な経験を重ねるようになってしまう。自分に何が起きたか戸惑うキャシーだったが偶然にも出会った3人の少女たちが黒いマスクの男に殺されるビジョンを見たことで、それが未来で起こる出来事だと確信したキャシーは3人を助け出そうとするのだが…。

今週は今年始まって以来の空前絶後の話題作ウィーク!!ということで立て続けに観に行ってて3本目で選んだのは「悪い意味で」話題の今作。

予告の段階から割と楽しみにしてて、なんかサプライズもあるらしいし、今か今かと待っていたんだけど、蓋を開けたらかなりの低評価の嵐笑笑。悪い意味で話題となり、Twitter(現X)のトレンドにも挙がるという体たらく…。

ただ、これまでもSSUは観てきたし、なんだかんだ評判悪かった「モービウス」もすきだったし、そんなネガキャンされたらギャグに観に行く気が起こるってもんだ!と公開3日目に普段行かない夕方の回に駆け込んで鑑賞!!

結論から言うと、え?…面白くね、これ。確かに言いたいことがないわけでもないけど、トータル結構楽しめた作品でした!!

お話はあらすじの通り、所謂「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」通称「SSU」の4作目。ヴェノム→ヴェノム2→モービウスときて今作、そして今年公開予定の次作が「クレイヴン・ザ・ハンター」となるわけで、ユニバースの中ではこれまでヴィランというかアンチヒーロー続きだったのに対して、今のところ唯一の「正義側」のキャラクターの映画となるわけか。

つーか、調べたら、「あのヒーロー」に関わる重要キャラであり、正確にはヒーローですらないらしいしね。

で、まず本作低評価の理由を観ると「ヒーロー映画」としてどうか?って問題に当たるわけで、その点で言うと確かにアクション面はほとんどない。あるにはあるけど、序盤と中盤にちょろっとと後はクライマックスくらいで時間で見ても数十分いくかいかないくらい。

加えて、主人公であるキャシーa.k.aマダム・ウェブの能力描写に関してもそもそもが戦闘向きではないのでこの点でもことアクションというよりかは後方支援というかサポートタイプのキャラクターなので、そもそもこれ主体にして映画って時点でちょっとどうなのかなー?という風には感じなくもない。

ただ、ただね!本作個人的にめちゃくちゃ刺さるポイントがあって、それが舞台が2000年初頭だということ!!

俺自身、今個人的に2000年代初頭のジャンル映画ブームが密かに来ていて、そういう意味では作り手がどこまで意識したのかはわからないけど、その雰囲気が抜群に出ている!!例えばカメラのバキッとした質感(まぁ、ここは他のSSU映画と同じ感じではあるけど)の中で、カラッと晴れ渡るニューヨーク全体の空気感然り、キャラクターの色鮮やかなファッション然り、キャシーが主に乗車するタクシーや救急車、そして中盤のいい感じのダイナーを筆頭とした建物となんつーか全体的に色濃ゆめ。

その中で全体のテイストとしてものすごく彷彿とさせるのが「スリラームービー」。というのもお話的には主人公キャシーが自分と偶然にも関わりがある3人の少女と知り合い、その3人の少女を殺そうとやってくる謎のクモ男に追われながら戦うという…ね?クモ男を殺人鬼に置き換えて考えるだけでなんだかスリラーの匂いを感じません?

まぁ、だからと言ってグロ描写があるかと言えば全然ないわけなんだけど、要はグロ抜きのスリラーと考えれば納得がいく作り。

しかも、本作なんと「逃げる側」がキャシーを含めてほとんど戦うすべを持たない一般人ということもあり、余計にそう感じる。

だから、そういう風にシフトチェンジして見始るとこれがもういい感じに楽しくって、楽しくって堪らない!!

加えて、やっぱキャストが良い。

主人公キャシー(マダム・ウェブ)役はダコタ・ジョンソン。この人の映画はあんまり観たことがないんだけど、いやぁ、お綺麗な女優さんですね。黒髪ロングの美人で抜群のプロポーションを持っているので、今作のトレードマークの赤のレザージャケットがものすごく良く映える!!なおかつ、母性というか包容力もある感じなので、劇中、行動を共にしていく中で3人の少女に芽生える「絶対に守る」という決意めいたキャシーの言動もめちゃくちゃハマっていた。

で、そんなキャシーと行動を共にすることになる3人の少女、ジュリア、マティ、アーニャをそれぞれシドニー・スウィーニー(「リアリティ」)、セレステ・オコナー(「87分の1の人生」)、イザベラ・メルセード(「花嫁のパパ」)が演じているんだけど、イモ欽の「良い子悪い子普通の子」じゃないけど、それぞれ個性が分かれていて存在感も抜群。

個人的にはシドニー・スウィーニーが演じたジュリアがメガネで内気っぽいのに男の子の前ではちょい軽めなギャップ含めて推せるなぁ笑。

そんな彼女ら偶然キャシーが乗る列車に偶然乗り合わせ、その能力を使い、謎のクモ男エザキエル(タハール・ラヒム「ナポレオン」)に襲われそうになる予知夢を見たことでそれが現実になる直前で難を逃れ、成り行きでキャシーと行動を共にするんだけど、初めは「え?誘拐?めっちゃ引くんですけどー。」的な仕方なくついてきて、女の子同士もなかなか相容れない感じではあるんだけど、段々とキャシーと行動を共にしていく中で、実はキャシーを含めてみんな「孤独」であり、心のどこかで「家族」を求めていたことがわかり、心を通わせていく描写も丁寧。

特に救命士であるキャシーから心肺蘇生法を一緒に実践して、学ぶシーンはまるで「師弟」の間柄のように見え、しかもそれがちゃんとクライマックスに活かされるところも含めて印象的。

だから今の社会的背景的に言うと女の子たちが頑張る話「ガールズ・エンパワメント映画」としても楽しめる!!

あと、肝心のキャシーの能力である「予知能力」。確かにほとんどアクション面では生かされる感じはなかったかもしれないけど、予知によって直前のピンチを回避できる機能で何度も危機を掻い潜ったりするところから始まり、ペルーで自身の過去とお母さん(ケリー・ビシェ)の行動の理由を知った後のクライマックスでの能力が研ぎ澄まされ、もはや見ていなくても瞬時に危機を防ぐ瞬発予知、そして能力が覚醒された終盤でのマルチバースに繋ぎ、違う世界線での自分たちを駆使して少女たちを救う今までにない予知能力の「先」を特化させたような能力描写もすごく新鮮で良かったと思う!!

まぁ、確かにもっといくらでも面白い能力の描きようはあったとも思うけども、「予知能力」を主体にしたヒーローという今までにないヒーロー像を作り上げたってだけでもめちゃくちゃすごいよ。

そして、今作もちろん大元は「SSU」。あの「スパイダーマン」と関わりがあるキャラクターの作品ということで、特に今作では過去一「関連性」がある作品だと言える。

例えば、全編に渡って印象的に使われる窓のヒビやカーテン、水中での能力発露なんかどうしたってスパイダーマンのモチーフである「クモ」を連想させるし、スパイダーマンといえばな「大いなる力」というワードも出てくるし、エザキエルのヴィランとしての格好がまんまサムライミ版のブラックスーツ・スパイダーマンみたいだし、なんと言っても事前では吹き替えのキャスト発表で演じるキャラ発表も含めて「あえて」伏せられていた「あのキャラクター」の若かりし頃の登場よ!!

序盤で何気ない会話の中で「あの人」のフルネームが出てきた時は「え?」と聞き間違いかと思ったけど、じゃあその人が付き合ってる人ってのが「あの人」で「あの人」が妊ってる子ってのが「あの人」じゃんか!!

いやぁ、「クモ」的に言うならば、繋げてきたなぁ笑。ただこういう知ってる人が観ると「おぉ!」とテンションがグッとあがる感じ、全然好きです。

ただ、別に知らなきゃ楽しめないわけではなくて、知っているとちょっとお得くらいのバランス配分なのも良かったと思う。ということで初見の方でもこれは全然楽しめるんじゃないのかな?

まぁ、ただ言いたいことがないわけじゃない。結局のところキャシー含めて、将来的にはヒーローでも現在はパンピーなのに、そんな女の子たち相手に結果的に負けちゃうエザキエル、弱くね?ってなっちゃうし、キャシーがペルーに行って戻ってくるまで早くね?とか終盤にかけて事態が早急な印象もある。

また、結局のところ、今作では彼女たちが「スパイダー・ウーマン」になる理由は明かされず、こういうヒーロー映画を見慣れていない人にとっては「え?なんで結局ヒーローになれたの?」って謎が残ってしまうところも極めて惜しい。

あと、散々勿体ぶって、結局生まれた「あの子」の名前言わないのかよ!せめて「ピ」、「ピ」だけでもさぁ、言ってくれよ!!

ただ、それを踏まえてもラストは非常に良かった!!戦いの後、落ちてきた瓦礫によって両目の視覚を失ってしまったキャシー、すぐさま病院に運ばれ、心配そうに見守る3人の少女にナースに聞かれて「家族です」と自信を持って答え、お互いがお互いを初めて本当の「家族」になることができたことがわかるシーンも良かったし、何よりもグッときたのが、まさにアメコミを今風にオーガナイズしてマダム・ウェブとなったキャシーが今はまだ名もなき少女である3人の「未来」を「今はよく視えてる」と未来でそれぞれスパイダー・ウーマンとして悪漢と頼もしく戦うその姿を未来視して見せるそのシーンはワクワクと共に普通にグッときて、鳥肌が立った!!

確かにアクションはないし、ヒーロー映画っぽくもない。ただマダム・ウェブというキャラクターをジャンル映画的な楽しみ込みでちゃんとパッケージングはできていて、ちゃんと「SSU」としての繋がりも感じさせる作品としても成立している。

いや、個人的にはSSUの中でも1番好きな作品かもしんないぞ、これは!!


ということで、トータルなめててすみませんでした💦
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