ねこみみ

法廷遊戯のねこみみのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
3.8
完成披露試写会 文京シビックホール

舞台挨拶ののちに上映でした。
登壇者:永瀬廉、北村匠海、杉咲花、大森南朋、戸塚純貴、深川監督


本編97分とあって原作よりもかなり大胆にシンプルなストーリー構成、登場人物も少ない、そのぶん物語の大切な部分がきっちり守られ、わかりやすく、でも鮮やかにスピーディに進んでいく、退屈させる暇のないあっという間の展開。小説読了済みでもとてもたのしめた!!

セイギのキャラクターに廉くんの纏う優しくも強い、静かに信念を燃やす雰囲気と声がぴったり。匠海くんのまっすぐな眼差しと力強い佇まい、花ちゃんの人生のすべてをかけた叫び。
登場人物が少ない分、演技力のある俳優で固められているのがものすごく作品の中で映えて輝いていた。

無罪と冤罪。
それぞれの正義、それぞれが果たしたかったこと、それぞれの選択。
この時期にこの映画が公開されるのはまた運命的というかなんというか…。
この映画を面白いと思ったら、きっと小説をあとから読んでも面白い。さらなる深い葛藤と「正解のない結論」を体験できると思う。
セイギ、馨、美鈴、それぞれが何を思って行動したのか、それも映画ではかなり軽めに描かれているので、よくわからないと思ったら小説を読んでみてほしい。なぜラストがあのようになったのか、わかると思う。

無辜ゲームの実施場所が原作と映画ではガラっと異なっていて予告を見た時からどうなることか…と少し気にかかっていたところだったのだけど、上手いことまとまっているどころかあそこでやることによって蝋燭を使用することに違和感がなく自然にドラマチックな仕上がりになっていて感心した。

無辜ゲームのみならず、映画では細かな設定や出来事が大幅にカット・改変されており、原作とはある種別物と考えて見るべき。原作ではこうだったのに!あれがない!などと騒ぐのはナンセンス。
話の本筋をしっかりとらえて約1.5時間に収める形に改変していることがよくわかる非常にうまくできたまとめ方で素晴らしかった。これ以上削ったら本筋が薄れていくし、これ以上説明し始めたら専門用語がわんさかでてきて観客がおそらくついていけなくなり、時間がいくらあってもたりない。そういう絶妙なラインをしっかり見極めている印象。監督、すごい。
「小説を元にしたエンタメ映画」としてクオリティが高かった。小説のほうが現実味があり、映画の方がフィクション感がある。
それゆえ、映画▶︎小説 or 小説▶︎映画、どちらのパターンでも楽しめると思う。

柄本明、大森南朋、戸塚純貴という大御所&癖強俳優は出番こそすくなかったもののさすがの強烈な印象をのこしていて、原作よりだいぶ出番が削られたストーリーでも遜色なく存在感があった。ほんとによかった。あの小説を1.5時間の映像にするというミッションの中で最上の出来だと思った。

そしてこの見る人によってラストに感じることが異なる作品、エンディングを飾るKing & Prince「愛し生きること」は、メンバーの海人くんが話していた「映画の世界をふわっと浄化させてあげられるような楽曲」に、とてもなっていたと思う。この曲で救われる感覚が、確かにあった。

97分にうまくまとまった本作もとても良いのだけど、いっそのこと3時間ほどの超大作として描く場合にどの設定を継ぎ足していくのか、それもまた観てみたいと思わされた。

※個人的には、映画はもう少し長くして詰め込むのもアリだと思ったし、小説はすこし引っ張りすぎていて終盤冗長さがあったと思っている。この2つの中間くらいの温度感だと飽きずにより深く考えながら楽しめそう。
ただ、おそらく普段映画を観ない層向けのエンタメ映画としては今回のまとめ方が最適解。映画好き向けのパターンを観てみたい。
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