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ルクセンブルク、ルクセンブルクのkyoyababaのレビュー・感想・評価

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2023年度EUフィルムデーズ、京都文化博物館にて。
軽妙洒脱なウクライナ・コメディ。ルクセンブルクで危篤状態にある父に会いに行く双子の兄弟、というプロットだが、いろんなトラブルが起こりなかなか出発できずもどかしい状態が続く。
トラブルの原因はそのほとんどが本人由来なので、決して同情できるものではないし、なぜそこまで情熱的に父親を心配するのかも説明不足。
ただ、張り巡らされた大小の複線がしっかり回収されていく様は気持ちが良かった(一部、なぜ挿入したのかよくわからないシーンもあったが。プールのリハビリ施設?みたいなところとか)し、いちいち笑いどころのカメラワークが面白いので、感情移入するタイプのドラマではなく、シンプルにコメディとして観るのが良かろう。日本の映画監督ならこんなラストにするまい、という挑戦的な描写も見どころ。
穿った見方をするならば、ルクセンブルクという国がある種の憧れの対象として描かれており(実際、ルクセンブルクは移民や越境労働者のGDPによって支えられているらしい)、「探していた青い鳥」を実際見つけたらどうなるのか?あなたにとってのルクセンブルクは何/どこか?という問いとも読める。探しているものは本当はもっと近くにあるのではないか。
──余談だが、平日の昼間ということもありほとんどの来場者が60代〜70代のお年寄りだった。こんなウクライナの映画に興味がある、あるいは専門的研究者が多いのだなと喜ばしく感じた。ウクライナ語はスラブ諸語のなかでは比較的ロシア語から遠いが、文字体系としてはロシアのキリル文字にはない і, ї が使われるくらいの差である。й も使うことはあるらしいので、看板や書類の文字が映るたびにワクワクして探していた。
などと思っていたが、よく考えると暇な年寄りが集まっていただけかもしれない。
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