このレビューはネタバレを含みます
朝ドラのあんぱん見て、新シリーズが始まったソロ活ドラマ見て、対岸の家事を見ているので、私の中で勝手に江口のりこ祭りが開催されている。
三姉妹のキャストに惹かれ、監督名に惹かれて見たいなあと思っていた作品。役者さんの演技は存分に見られたのでそこは嬉しかったけれど、橋口監督のくるりのことなんかのイメージで勝手に思っていた作風と違ったので、ちょっとびっくりした。
もともと舞台の作品だったらしく、なるほどなあと言う作風。映画的な表現というよりは、舞台が旅館に固定された中でセリフによって物語が進行して、役者さんの演技をじっくり見るタイプの作品。こう言う作品、これはこれで好きなんだけれど、終始姉妹3人が言い争っているので、あわない人はいるだろうなあ。
ほとんど画面に登場しないお母さんが、結局物語の核なのね。毒親とまではいかなくても、母親の言動が三姉妹たちの心に影を落としている。しんどいお母さんやなあとは思うけれど、いるよねー、こう言うお母さんというラインで描かれている。
母親の言葉を最も間に受けて真面目に生きてきた長女は、身勝手な親の期待通りに生きてきたつもりだったのに、ここに来て親の期待にそぐわない人生になってしまって、それでも彼女に自分の価値観を押し付ける母親に反発したり媚びてみたり。感情を大きくぶらして、それでも妹たちには母親の同じような価値観の押し付けをするのが苦しい。彼女はもし子供に恵まれる人生だったとしても、母親と同じような形で子供に接するのではないかしら。負の教育の再生産だ。
次女は母親を反面教師として恋多き人生を送っているのだけれど、それほど幸せではなさそう。誰とも付き合うことなくお見合いで結婚し、相性のあわない旦那の悪口を言い続ける人生を嫌って、幾つもの恋に生きてきたけれど、自分を心から大切にしてくれる人には出会えなかったみたい。
三女は姉たちを見てちょっと距離を置いている。それでも結婚にこだわっているのは、姉たちを反面教師としているんだろうなあ。
三女が連れてきた結婚相手が一番真っ当だった気がする。三女が思わず漏らした酷い言葉を、彼は聞いてないことにしてくれた。そういう優しさのある人。
彼が語る自分のお母さんの思い出。彼が自信を無くした時に、彼の素晴らしさを語ってくれた。三姉妹のお母さんと対照的なお母さん。おそらく三姉妹のお母さんに最も欠けていたのは子供達を肯定してあげることだったんだろうな。
三姉妹は一晩中、感情をむき出し、他人では言いにくいことをズバズバ言い、怒り、嘆き、罵り合う。それでも、夜があけて、気が済めば、また姉妹に戻れる。戻れると分かっているからこそ、ああやって思ったことを言いあえる。どんなに悪口言っていても、お母さんが喜んでくれたら嬉しい。子供は人格者だから母親を愛するのではなく、ただただ愛したいのだ。
ハッピーエンドっぽく終わっているけど、お母さんは歳と共にどんどん難しい性格になっていくだろうから、彼女たちの苦労は尽きないだろうなあ。