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青い凧のNOBUのレビュー・感想・評価

青い凧(1993年製作の映画)
3.2
中国の近代史を知らなければこの映画は解らないし、つまらないで終わってしまう。
1953年というと、まだ国共内乱の傷跡が多く残っている中で第一次五カ年計画が発布され、新中国の発展に期待を寄せる市民たちの姿が捉えられる。その中で母、樹娟と父、少龍は結婚し、二人から生まれる鉄頭はまさにこれから歩む中国の動乱の象徴的存在として捉えることができるだろう。父、少龍の死、そして新しく鉄頭の父なる少龍の友人、李も病死する。3番目となる父親はやがて毛沢東の妻、紅青によって始められた、紅衛兵の吊るし上げに遭う。
この映画を観ていると、樹娟の存在は、本作の監督田壮壮が自身の母で女優の于藍の波乱の人生と被ってしまう。彼女の女優人生も紅青の嫉妬から攻撃された被害者であり、紅衛兵と言う存在を観客に語りかえて本作を終わらせている。
というわけで、中国の近代史を疑似体験するような映画であり、中国本土では未だに正式に承認されていない映画なので、中国の映画史としては大変貴重な作品であるのは言うまでもない。
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