ryota

世界でいちばん不運で幸せな私のryotaのレビュー・感想・評価

5.0
幼馴染の男女が幼少期に2人で始めた“ゲーム”を大人になっても続け、お互いに惹かれ合いながらもそのゲームによって関係が拗れ、しかしそれでも…...みたいなことがずっと続く映画

ジュリアンは母の死と父からの抑圧
ソフィは貧困と虐め
それぞれが痛みを抱えているからこそ通じ合った2人の関係性は、かなり歪な共依存だ

エディットピアフの『バラ色の人生』がテーマ曲のように使われていて様々なバージョンで流れるけど、最初にわかりやすく登場するのは葬式のシーン
母の死によって悲しむジュリアンを“喜ばせる”ためにソフィが楽しげに歌い、周りの大人たちは困惑するもののジュリアンは笑顔になる このシーンこそがこの映画を表していると思った(この映画の数年後、ソフィ役のマリオンコティヤールは『エディットピアフ〜愛の讃歌』でエディットピアフを演じている!!!)
このシーンでソフィはジュリアンのことしか見ていないし、ジュリアンもソフィのことしか見ていない これはこの先描かれる2人の関わり合いにおいても一切変化しない
お互いに別の相手と結ばれようとも、2人は絶対に切り離せない何かで繋がれていて、それは2人がずっと続けているゲームによって象徴されている(更にそのゲームはブリキ缶によって象徴されている)

2人は様々な(時には理解できないほど酷い)方法でお互いを意図的に傷つける そのやり方がエキセントリックなので、その点でこの映画を嫌いになる人は多いと思うけれど、家庭環境によって心に傷を負った2人が惹かれあい共依存し、こうなってしまうのはある意味自然なことなのかもしれない


時間経過を様々な方法で表現するのもおもしろい
「ソフィと僕はその夜10年寝た」というフレーズで10年後に移行したり、その他にも作中に出てくる言葉がいちいち小粋なのも好みだった
演出も洒落ていて色彩も暖かく鮮やかで、いかにもフレンチな感じの空気感が、過激な脚本をポップでライトな表現に昇華していた

ラストシーンは本当にロマンティックで美しく、この2人ならそうなるよな と思うような結末だった
ここでサッチモverの『バラ色の人生』を使うのもニクい(でも映像演出は安っぽくて微妙)

賛否両論あるタイプの映画だと思うけど、総合的にかなり良く出来ていると思うし、個人的には大好きな映画の一つになった
“2人は幼少期の傷によって倒錯してしまった”という点を意識せずにサラッと見てしまうと、この映画をしっかり理解することは出来ないと思う




『バラ色の人生』の歌詞をネットで拾ってきたけど、もうこの映画にはこの曲以外考えられない!!

C'est lui pour moi
彼はわたしの人生たった一人の
Moi pour lui
わたしも彼の人生たった一人の
Dans la vie
その人
ryota

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