ばんがど

世界大戦争のばんがどのレビュー・感想・評価

世界大戦争(1961年製作の映画)
4.0
覇権国家の夢破れまだ経済大国ですらない戦後16年の日本が描いた第三次世界大戦と人類最期の日。
西側東側とも言及できず、指導者の顔も見せないまま推し進められるストーリーは、及び腰とも映りこれでは核保有国には全く響かない気もするが、ヒトラーやムッソリーニも存在しなかったにも関わらず国家が破滅するまで戦争を続け、その後占領統治用の憲法を77年間拝み続けるこの日本国民にはとてつもなく心に響いてしまう。先導されることもなく節目もなく静かに進んでいく世界大戦。株の銘柄を気にしていた日も学校が休みになった日も最後の晩餐を選択した日も何か劇的な変化を感じる兆しすらなかった。もしかすると先の大戦でもパールハーバーもミッドウェイも沖縄も広島も長崎も振り返れば節目なだけでリアムタイムで節目と感じていた人はほとんどいなかったのかもしれない。この指導者なき世界大戦は日本人には恐ろしいほどリアルでラストのメッセージにはハッとさせられる。
ただ現実はこの2年後のキューバ危機も今回のウクライナ侵攻もそして迫る台湾有事も北朝鮮のミサイルも強烈なリーダーシップによって推し進められてしまっている。傍観者をやめ積極的平和主義を掲げたリーダー亡き日本はどう動くべきなのか…考えさせられる作品だ。
35mmの解像度で突きつけられる東京焼滅シーンはVHSやDVDとは別次元の恐ろしさで円谷特撮の凄みを感じた。
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