丽遥

喜劇 女は度胸の丽遥のレビュー・感想・評価

喜劇 女は度胸(1969年製作の映画)
3.7
パンスケは人間だという肯定、今でも全然通じるし、当時だったら尚更だったのでは?女の胸や尻をことある事に触り、空気の読めない渥美清の役どころというかスター性はやっぱり苦手だったが、境遇の異なる3人の女が自分の意見を主張し、納得できるかたちで幸せを得ることができたのは本当の意味でハッピーエンドだなあと。

前半お母さんはほとんど常にアウトフォーカスで発言もせず、影のように慎ましく生きている感じがあったけど、前景として映ることは多かった。それは終盤の独壇場への伏線で、お母さんこそこの家の縁の下の力持ちだったという表現だったのかなと。終盤では画面真ん中で大きく映されたけど、ピントはお母さんに合うようになっていた。
お母さんの言葉遣いも変に母親の記号的な言葉遣いではなくて、答え方も「ああ、出てけよ」とか男顔負けなのがよかった。ラストで男たちのパンツ干してるのとか、お父さんの賞状見て微笑んでるショットとか、彼らへの愛でもありつつ、お母さん自身の自分がしてきた愛に対する誇りが感じられた。それを台詞無しで描いてみせるんだからすごいなあ

あと、喜劇の画面上ではネオン看板とか飛行機の飛行など高度経済成長の象徴のようなモチーフがひしめきあっていたけど、その合間を縫うかのように人情が溢れていたのがいいなあと。戦前からのお父さんお母さんカップルの過ごしてきた年月の経過を思わせるし、新しい世代への希望とかとも結びついてたと思う(倍賞美津子は最新式工場の女工)。

パンスケも人間だ発言はよかったけど、パンスケなんて、、派の倍賞美津子カップルのパンスケに対する謝罪はなくていいのか?というのはある🥹
あと主人公の男が悪い妄想をするときに画面が白黒になって、物語内音楽が彼の不安や絶望に合うかのようにアレンジされてるのが面白かった。ほかにも主人公がヘッドフォンしてるのに同期した音楽も。今川焼き屋とラブホ?に入る時のブレブレのカメラもよく主人公の不安を表してた。女は度胸をテーマに作ると、逆に男は弱々しくなっちゃうのはどうしたものなんだろう。家父長制っぽい強さじゃなく、男も好ましい強さを持つべきだなあ。じゃないと、強い女弱い男の表象が去勢回避に繋がりかねないと思う。それだとまた女の本質を捉え損ねることになるよね🥹
丽遥

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