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ファイナルファンタジーのnobuoのレビュー・感想・評価

ファイナルファンタジー(2001年製作の映画)
3.3
RPG業界にとって、或いはFF・スクウェアファンの俺にとって悲劇的な大コケをぶちかました映画。ジャンルはディストピアSFファンタジー。リアルタイム劇場鑑賞時は意味不明すぎて唖然とした記憶が。小学生には理解不能でした。
この度改めて鑑賞したところ、記憶ほど酷い映画ではなかった。そしてFFファン兼映画ファンとして、良い点も悪い点もひっくるめた再検証を試みました。


まずゲームのFF7や9同様、“作中世界においてガイア理論(的なもの)は事実である”というスピリチュアルな根幹設定さえ飲み込めれば、そして説明不足なクライマックス以外は...キャラ造形もドラマパートも比較的ベタなアクション洋画としてそこそこ楽しめる。内容が破綻したクソ映画とは決して言えない。
「ドリヴン」「カットスロートアイランド」等、コケた=駄作とは言い切れない映画は多い。本作もそれに加えていいんじゃないか。午後ローで放映されれば幾分か再評価されるかも。とはいえ、決してその二作ほど褒められた出来の映画ではないが。


まず本作が発するつまらなさの最大のポイントは、幽霊じみた敵エイリアン“ファントム”のパワーバランスがイカれている点にある。
近寄られて直接攻撃を喰らったら人は即死...という圧倒的強さ+数の多さのせいで、どのバトルも防戦一方。銃撃をかましても時間稼ぎにしかならないので、話の停滞を招く始末。主人公サイドが能動的な戦いを仕掛けない事は本作のテーマとも合致しているが、映画としては単調で退屈に感じられてしまう。
クリーチャー造形そのものは故・韮沢靖氏の作家性が出ていて嫌いじゃない。確かに雰囲気が韮沢氏デザインによる仮面ライダーブレイドの怪人・アンデッドに似ている。


練られているはずの世界観の見せ方もダメ。上記の基本設定はキャラのモノローグ説明頼りだし、民間人モブ描写がほぼ無いせいで滅亡寸前の人類の文化レベルがわからないのは問題。例えば食事シーンとか欲しかった。


キャラや劇伴等にキャッチーさが無いのも問題か。
FFお馴染みシド博士役がドナルドサザーランド、主人公の一人グレイ役はアレックボールドウィン...とキャストは豪華なのに。(アレックの吹替はキーファーサザーランド吹替でお馴染み小山力也...つまりある意味サザーランド親子共演?)
記憶に残る曲はラルクの主題歌のみ。先述の様に根幹設定はゲームと近しいので、劇伴もゲーム同様植松伸夫氏を起用してほしかった。どこかで「プレリュード」か「FFのテーマ」のアレンジ流すとか。本作がゲームのFFっぽくないと言われがちなのは、SF色が強い世界観よりも劇伴の問題が大きいのではないか。


当時ウリだったフルCGは、約20年経過した今見るとテクスチャ等に雑さが目立つ。フェイシャル/モーションキャプチャの技術もまだ未成熟だったのか、特に主人公アキの演技がイマイチに感じる。体幹が弱すぎてフニャフニャ。
この点は当時の技術力の限界もあるのでスコアには反映させませんでした。



それにしても...部外者がやらかした「DQユアストーリー」と違い、こちらは原作者自ら手掛けてこの結果なのがやるせない。そもそもこの映画が作られなければ坂口監督は13以降のFFにも2以降のキングダムハーツにも関わり、ゼノギアスのdisc2はノベルゲーにならず、数々のスタッフが独立する事もなく、大好きなアニメ「FFアンリミテッド」は打ち切られず、スクウェアはエニックスと合併せず...。歴史にIFは無いとはいえ、ファンとしてはつい色々考え込んでしまう。
せめて映画に挑むなら、FF9のような雰囲気かつピクサー的なタッチのファミリー向けアニメを観たかった。


尚、スタッフロール終盤にはスペシャルサンクスとして沢山の旧スクウェアクリエイターの名前が。一時停止しながら確認したところ...サガの河津氏、ライブアライブの時田氏、FFT/12の松野氏、聖剣の石井氏、KHのノムリッシュこと野村氏等々...。まさかこの面々がハリウッド映画のスタッフロールに載ってるとは。
先に述べた植松氏(ほか崎元仁氏、浜渦正志氏ら主要音楽スタッフ)の名前もあった。なら劇伴に起用してあげてよ!
意外な所だと、ジャンプのマシリトこと鳥嶋和彦の名前も。
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