生永這人

消えたシモン・ヴェルネールの生永這人のネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

本作は『桐島...』や『明日、君がいない』『エレファント』等に使われている、斬新ではありますが、使いようによっては単なる各シーンとの接点に多少の面白みを感じるだけの凡作に終わってしまう可能性をも隠し持つ映像手法を使っています。

その可能性を指摘するのは、このクロス・カッティング手法の意義が、登場人物おのおの別視点より、同じイベントを辿ることで、一人称から脱却し、潜在的偏見などを払拭ないし新たな心情の発見に資することだと私個人考えており、わざわざ長い尺を取って同じ場面を繰り返すという、眠気を誘うようなリスクを冒してまでも伝えたいことがある物語にこそ妥当な手法に違いないと思うがためです。

では、あらためて本作についてみるに、まず、クラスメートが一人、また一人と消えていくなか、その短期間を4人の視点で追っていく構成をとりますが、重要人物であるだろう「シモン」がその最後の一人として彼の視点で語りだし、「消えた」理由もそのパート数分後で明らかになります。
ネタバレですから書きますが、結局彼は何の関係もない男に殺され、彼の死体は森に放置され、近場でパーティをしていたクラスメートが偶然にも発見。そして葬式という流れを、わざわざ伏線でもあるかのように描いた意地悪い作品という印象が強く残りました。

しかし、実のところ「消えた」の真の意味を知ったとき、言葉に詰まりました。
それは葬式後も割と平然と食事をしたり笑い合ったり涙さえ嘘っぱちな「クラスメートの頭の中から消えたシモン・ヴェルネール」ということだったのです。
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