途中まではかなり厳しいなぁ…という思いで作品を見ていました。
冒頭でいきなり主人公(堀北真希)の寿命が短いことが発覚。
そして、堀北真希は好きな人に会いに旅に出る。
いくらなんでも設定がありがちすぎるし、感情移入する暇もなく好きな人に会いにいく旅がはじまるってどういうことやねん。と。
そこから海が見える町へ旅にでた堀北真希は幼馴染で好きな男に会いにいくのですが、実はその幼馴染が近所の人妻と不倫をしているという…。
最悪だ。なんだこのうんこみたいな話は。
かなり厳しいなぁ…と思ったその瞬間、ふと思ったんですよね。
「あ、この感覚かなり現実に近いなぁ」と。
冒頭でいきなり主人公の命が短いことを視聴者につきつける演出も、現実とかなり近いです。というのも、寿命を宣告される人のほとんどはある日突然いきなりつきつけられるものだから。
さらに、そのあとの幼馴染が近所の人妻と不倫しているというどうしようもないシーン。これも、自分が大変な思いをしている時に限って、頼りにしたい人が全然ダメダメで…というかなりリアリティのあるシーンです。
そして、その時に感じるのは周囲との「温度差」です。
どんな人でも大なり小なり温度差を感じたことはあると思います。
めちゃくちゃ楽しみにして会いに行ったのにやたらテンション低い友達。
すぐ相談したいのに、大事な時に限っていない親。とか。
恐らく、人は自分が死ぬってなった時にいい意味でも悪い意味でも急激に達観してみえる世界がそこにあります。
その時に何よりも感じるのが「温度差」です。
僕らが悩んでいることのほとんどが死ぬ直前の人たちからしたらなんてことない、どうしょうもないことです。
そのため、堀北真希もその温度差にやられて自転車を盗難したり、不倫相手の子どもを勝手に連れ出したりと自暴自棄になっていきます。
そして物語終盤。
自分の思いをそれぞれ登場人物にぶつけていくのですが、一番重要な「自分の命はもうあと僅かである」ということは誰にも言いません。
エンディングのシーンも「また会おう」と幼馴染に言われて終わっていきます。
おそらく、主人公が自分の口で言い出せなかったのはどうしても埋められない温度差があったのでしょう。その時の主人公の気持ちに思いを馳せると、めちゃくちゃ儚く、めちゃくちゃ悲しいです。
ただ、エンディング直前のバスのシーンに少し希望はあります。
そこでは堀北真希が幼い頃の夢だったバスガイドを。無人のバス内で行うくだりがあります。それは、バスガイドの紹介のやり方で自分の半生を紡いでいくというシーンです。その時、バスは凸凹道の陽がささない暗い道ずーっと走っています。しかし、堀北真希がバスガイドの口上を全て終えた瞬間、嘘みたいにパーっと陽がさして車内が明るくなります。
それは、堀北真希が自分の一生に笑顔で決別することを誓った瞬間だったのかもしれません。