映画おじいさん

白昼の決闘の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

白昼の決闘(1950年製作の映画)
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スクープを争うライバル新聞記者同士の闘いを描きつつ、報道のあり方を問いかける社会派ドラマの佳作。新東宝ディープな世界とは無縁。

序盤、杉葉子と新婚という設定でご馳走さまな池部良の大根役者ぶりに驚き。『現代人』(1952年)で演技開眼した逸話も納得。

田崎潤は電話局に勤める女・岸旗江を利用してスクープをスニークしていた極悪ライバル記者を好演。

池部良が新聞社ぐるみで、そんな田崎潤を陥れて高笑いしつつも、計画が上手く行き過ぎて同情さえも。そんなことは意にも介さない田崎潤は電話局をクビになった女は不要とポイ捨て。
恩人(杉葉子の父で元敏腕記者)が工場火事を見て気が狂い笑い出したら、その瞬間をすかさずパチリ。その非道っぷりが最高。池部良をブルジョワ呼ばわりしたり、学歴や家がビンボーだったことを根に持つルサンチマンの塊なところも最高。

田崎潤に捨てられてフェイドアウトしたかと思われた岸旗江が保母さんとして再登場。事故で園児7人を亡くし責任感に苦しんで寝込んでいたところに田崎潤。園児の事を忘れて「なんでここに居るの?!」とわめきだす岸旗江。腐った男に惚れてしまった哀しい女を大好演。これまた最高。

菅井一郎がロシア文学好きな池部良の社の先輩で、オシメ洗いなど嫁の尻に敷かれる軽いキャラで出番は少ないものの好サポート。嫁が出て来ないのも◎。

工場のストライキシーン、ストライキが滑稽な感じで描かれていると思ったのは気のせい? *気づかなかったけど、ここで伊藤雄之助が実弟とツーショット共演とのこまと。

「あなたたち新聞記者は私の娘を二度殺す気なの!」という老婆の言葉が胸に刺さるけど、これはどこか他でも聞いたことがあるような気も。

電話中に時おり受話器を顔の前に向けて話す池部良のジェスチャーはアメリカ人みたいだった。日本人であんなことする人、現実も含め初めて見たかも。

ラスト、唐突で取って付けたようなまとめ的ナレーションも大好きでした。私みたいな下品な大衆がいなくならない限り、田崎潤みたいな人間もいなくならない、と単純に思いました。