苦手な東宝明朗喜劇だけど本作ほどのクラシックともなると、ドジョウのシークエンスみたいなグダグダなところもあったけど、やはり面白かった。
一般にも電話が普及し、都会の旅館では接客窓口となる番頭さんが不要になってきた、というのはネット普及で様々なビジネスのあり方が激変している現代でもハッとさせられるのでは。
テクノロジーが進歩する限り、これからもずっとそうやって人力が不要になっていくと思うと複雑。テクノロジーが人間のスキルの価値を変えていく不安。
同じく森繁主演の『大工太平記』(1965年)ではそれがズバリ描かれていた。
しかし本作の森繁の言葉を借りるなら、人力を介さないことこそ風情がないですよね。。
いい感じの時にらっきょうを食べようとする森繁。それを止める淡島千景。すごく良いシーン。
ファーストショットから彼女の艶っぽい表情をとらえていた、さすが豊田四郎。
淡島千景に馬車で追いかけられ、最後は一緒に大笑いする時の森繁の表情が最高だった。引きつった笑いが。森繁、苦手だったけど好きになってきました。
市原悦子が目立つ女子学生三人組のリーダー格で出ていて、若い男性(フランキー堺)をタジタジにさせる、いつの時代にも居る居る女子を見事に演じていた。
ドジョウのところで浪花千栄子が「百発百中」というセリフをかんでしまうけどスルー。珍しい。他では森川信もかんでいた。よほどの早撮りだったんでしょうね。
虚言癖のケがあるという伴淳は、そのキャラがピッタリですごく良かったけど、もっと面白く出来たはず。ちょっと残念。
上野駅からわんさか人が溢れ出てきて道を埋め尽くすラストショットには、これからどんどん発展するぞという感じがして何だか印象に残りました。