映画おじいさん

十六歳の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

十六歳(1960年製作の映画)
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タイトルからして浅丘ルリ子のアイドル映画だと思ったし、井手俊朗が三木克己名義の時はハズレが多い印象なので期待せずに観たら、予想とは全く違う、米軍基地の街(たぶん入間)を舞台にした社会派ドラマで大好物な作品でした。必観!

以下、毎度のネタバレ。

まずは娼婦というかパンスケに対する考え方に驚く。これが一般的だったのか、それとも貧しい家庭が舞台だったからなのか。いづれにせよ、こんな視点で映画が作られることがスゴい。

当時実年齢20歳の浅丘ルリ子がまさにはきだめの鶴な可愛さ。それを狙う変態中学教師の葉山良二と長門裕之。
ボディタッチはしまくり、浅丘ルリ子が部活中にカバンの中身をみて、お前のことが心配なんだからとか何とか言って暴力まで振るう葉山良二は完全にサイコパス。ヤボテンなルックスがその役にハマりまくって最高。
長門裕之はレイプまでする手の施しようのない鬼畜だけどクビだけで済んでしまうことで、当時の日本ではレイプが大罪ではなかったことがよく分かる。被害者の浅丘ルリ子が長門裕之にしなだれていくのはホントに酷い筋書きだよな…ここだけが本作の不満点。

「純情なんて生きていくのに邪魔にしかなんないから捨てちまいな!」といきがるも一番純情なパンスケの渡辺美佐子が本作でもメチャ素晴らしい。貧しい農民たちに同情したらアカ呼ばわりされ、米軍人のダンナに捨てられるくだりには涙。本作の根底には現在も解決していない米軍基地問題が全てに絡んでいて社会派ドラマとしては全く古びていない。

「(前の)とうちゃんが殺されたんだからアメリカの軍人からボッたくってもバチ当たるめえ」と平気で口にする下品で銭ゲバな母親・山岡久乃も最高。思考停止な父親・殿山泰司も地味に素晴らしい。

詰め込み過ぎな内容で一度では消化出来そうになかった。そこが苦手だった人も多いとは思うけど、私には何度か観たいと思わせるサムシングがありました。