HajimeK

女ハムレットのHajimeKのレビュー・感想・評価

女ハムレット(1920年製作の映画)
3.9
神戸発掘映画祭2023にて

 サイレント時代の異性装は、いつ異性装をしている人物が言葉を発するのかがあまり重要ではないのだろうか。声を発すると自分がパフォーマンスをしているのが周囲に分かってしまうので、その瞬間が脚本を練る上でまず念頭にあるはず。
 でもこの作品の場合は、映画のほぼ全編を通してアスタ・ニールセン演じるハムレットは男装している。だからこそ、男のふりをしているハムレットとホレーショの関係が描かれる時間が長いことで、クィアな読みがより容易になる。
 さらに、ハムレットにとっては恋敵であるものの、ハムレットを男だと思い込んでいるオフィーリアとの関係もクィアな読みをする余地がある。
 もともと「劇中劇」が物語の柱であるシェイクスピアの『ハムレット』を女性が演じることで、より人物関係が入り組んでパフォーマンスが重層的になっているが、その分多様な読みを可能にしている優れた作品である。
HajimeK

HajimeK