映画おじいさん

地方記者の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

地方記者(1962年製作の映画)
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駄作とまでは言いたくないけど、新聞記者としての社会派ドラマ、妻・白川由美とのホームドラマ、青年・夏木陽介の成長記、漁村の公害問題、閉山炭鉱町の貧困問題などなど色んな要素を盛り込んでみたものの、それぞれ中途半端にしか描かれていない何だかモヤモヤな作品。

自転車を盗んだ少女を家まで送った時に、その廃山になった炭鉱集落の貧しさを見て愕然とした夏木陽介が記事を書くけど、読者の興味をひくような新しい視点がないから駄目だとフランキー堺にたしなめられる。
ここから面白くなりそうというところで尻すぼみまま次のトピックに移る。そんなのばっかり。

「犬が人に噛みついてもニュースにならないが、人が犬に噛みついたらニュースになる」という有名な言葉は、この映画からなのか⁈と思ったけど、やはり別に元ネタがあって米国のジャーナリストの言葉だった(→When a dog bites a man that is not news, but when a man bites a dog that is news.)。

以前から住民の対策要望があった危険な用水路で死んだ少女の写真を、記事用に父親から手に入れるというシークエンスは面白かった。
のんびりとしてそうなフランキー堺(が演じた役)が鋼のハートを持っていることが分かる。
ここでフランキー堺か父親に会う直前にお札(お金)を紙に包むショットがあったにもかかわらず後でそのことは何にも出てこなかったのは、ひょっとしてカットされたから?

そんなことを考えしまうところが多く、その中途半端さに少々がっかりさせられました。

当時最先端だったと思われる写真のテレックス装置を白川由美が使っているシーンがじっくり撮られていたのも何だか可愛らしかった。ヘッドホン姿も◎。

組合との話し合いで乱闘になるモブシーンは凄かった。左卜全がお約束の出落ち。

いくら東北の田舎と言えども新聞記者と警察が馴れ合い過ぎるのは、今では描き難い世界だから逆に面白かった。