ばーとん

稲妻のばーとんのレビュー・感想・評価

稲妻(1952年製作の映画)
4.4
母親と種違いの三姉妹+南方帰りの長男という家庭に
やり手の男が介入することで、家族は次々に金銭的に懐柔され
男女の関係もずるずるべったりの状態に落ち込んでいく。
潔癖な末娘はこの状況に嫌気がさして家出。
二階に下宿する女学生、次女の亡夫の妾、二人の娘と孫娘を持つという
下宿先のおばさんなど様々な女の生が紡がれていく。
ラストのシークエンスがとにかく秀逸。
どうしようもない苛立ちから母親と自らの人生を全否定する娘。
「産んで欲しくなかった!」なんてこと言っちゃう。
いちばんいい子だと思っていた末娘の叛逆に衝撃を受ける母親。
喧嘩のあげくに泣きだす親子。
そこで(理想的な兄妹の住む)隣の家から聴こえてくるピアノの音。
すっと立ち上がり電灯をつける娘。
空に向き合うような形で光るふたつの稲妻。
緊張のピークからふっと我に返る瞬間。
会話に頼らず音と動きで人間心理をサスペンスフルに表現する
後のデ・シーカ映画にも通じるような鮮やかな演出。
女性の描写にかけて右に出る者のない成瀬の面目躍如である。
泣ける。
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