えそじまさんの映画レビュー・感想・評価

えそじま

えそじま

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.5

熱い!息急き切って肉迫する生きた運動が結末の記憶と呼吸を置き去りにしてくれた。音が還ると青春も戻ってくる。

飾窓の女(1944年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

うまい。殺人と殺人未遂、陰謀、恐喝といった物騒な犯罪が重なって起こるジョーン・ベネットの呪われた部屋に鏡面が多く、虚実混じり合うこの物語にふさわしい空間になっている。すべては初老の疲れた犯罪心理学者E>>続きを読む

天使の涙 4Kレストア版(1995年製作の映画)

3.4

タバコ映画。刹那的な通過点だってけっして無感情ではないということ。ネオンの照射が刺さるのもそういうことだ。ただ、『恋する惑星』のほうがよかったな。

過去のない男(2002年製作の映画)

4.1

突如襲う過剰な暴力にはじまり、俗世のつめたさ、世の無情を淡々と受動的に描いているのにあたたかい。脈絡のない無国籍的な表現の均衡が、歌とやさしさ、おぼろげな希望によってささえられている。ここが人間の居場>>続きを読む

結婚のすべて(1958年製作の映画)

4.3

リベラルと保守の両極が正面から衝突するわけでもない。中間にひろがるさまざまな価値観にふれ、その本質を見てゆっくりと時代が変わっていく初動を、快活な喜八節でたのしむことができた。初期作からキレッキレであ>>続きを読む

大砂塵(1954年製作の映画)

-

徹底した崖下の事件への俯瞰にはじまり、ヒロインのヴィエナがそこに立ち階下を見おろす賭博場の階段につづき、人が人形のようにころげ落ちていく岩山の急斜面にいたるまでの異様な高低差は、たしかに物語よりも多弁>>続きを読む

拳銃魔(1949年製作の映画)

4.4

これこそアメリカンニューシネマの先駆けであり、ヒッチコックでありゴダールだ。可能な限りフレームの中で、強迫性らしき拳銃への執着も転落もスリリングに語ってしまう。最後まで犯罪を否定しつづけるジョン・ドー>>続きを読む

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)

3.8

こんなところで何してんだろう、もう帰らなくちゃいけないと焦りながらも、そのけむたい場所からどうも動く気になれないのは、なんの前触れもなく急激に接近する距離と速度の異変に、停滞からの爆発的な脱出の可能性>>続きを読む

夜までドライブ(1940年製作の映画)

4.0

映画における扉の魔力と正面から向き合うラオール・ウォルシュ。ファムファタルを演じるアイダ・ルピノ、暗殺決意からのセンサーの伏線回収、背後で自動扉がしまり殺人完了するショットが完璧だった。居眠り運転のタ>>続きを読む

(1989年製作の映画)

4.7

映像の裏切りに誘われる濡れた美しい感情。たとえばヴィセンテとクララの瑞々しい接吻がついに結ばれるそのとき、とつぜん暗闇が襲い、次の雪降る夜空のショットで画面下の見えない階段からピョコっと上がってくるの>>続きを読む

フォーエヴァー・モーツアルト(1996年製作の映画)

4.8

しかるべき人が語ろうと思えばどこまでも語れるのであろう膨大な知識と意味と映画史が込められた映像が、ちゃんと劇物語として成り立っている。その代わりに、まったくもって咀嚼が追いつかないほどのめまぐるしいス>>続きを読む

ヒッチ・ハイカー(1953年製作の映画)

3.7

おもしろい。冒頭から足と影と車のショットをトントン繋いで、ヒッチハイクから殺人までをわずか1分弱で完了する映像の省略、鮮やかだった。

後部座席の影からヌっと照らされてあらわになるウィリアム・タルマン
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教授と美女(1941年製作の映画)

4.2

10年近く屋敷にこもって愉快なおじいちゃん学者たちと百科事典を編纂する童貞教授ゲイリー・クーパーが、俗語を学ぶために世へでて、ギャングの愛人に恋をする。脚本にビリー・ワイルダーの名があるのが納得のスト>>続きを読む

アデュー・フィリピーヌ(1962年製作の映画)

4.3

一見デタラメにも見える無邪気なシークエンスのなかでふいにドキっとするような瞬間が放たれ心に乱反射する。特に後半のコルシカ島の旅は言いつくしがたく、永遠にみずみずしい不思議な生命力を感じた。

どこかボ
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死刑執行人もまた死す(1943年製作の映画)

4.8

民族意識的なレベルでの集団の捉えがたい動きをここまでサスペンスフルにおもしろく構成できるんだと、純粋に驚いている。天才的にうまい。印象深いカットをあげていくとキリがない、ほぼすべてと言っていい。

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

3.9

ロードムービー。コーヒー、煙草、カメラ、モノクロームの相性がいい。

語らずとも伝わる四人の関係のそこはかとない変化から、子ども三人がいたずらっぽい目で見守る中での劇的な男の決断ショットがよかった。カ
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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

4.5

めちゃよかった、躍るような夏の陽の光も即興の演者だ。あんなにも多幸感で溢れていたのに、もう二度とそこにもどれないカラオケの喧騒で涙がこみあげてきた。あの一夜をひとり逃してしまったフェリックスが幻想的な>>続きを読む

ゴールキーパーの不安(1971年製作の映画)

3.8

審判ど突いて退場になったゴールキーパーの犯罪と彷徨。男の実存的な不安、幼稚性、衝動と周囲の世界。不条理な流れのなかで子どもへのある種の共感やぼんやりとした主観が描かれているのが良い。ヴェンダース映画と>>続きを読む

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)

4.5

乱れる夫に別れを告げ、若くして乳癌に倒れた女流歌人(中城ふみ子)の最期。監督は田中絹代で、主演は月丘夢路。

雨の中バス停へ向かう森雅之と月丘夢路に並行移動し、おおきく旋回するカメラの動きがすばらしか
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女っ気なし(2011年製作の映画)

4.6

夏の終わりにみた束の間の夢だったんじゃないかとすら思う。どこか寂れた観光地の雰囲気がただよう北仏の海辺、そこに暮らす「女っ気なし」男のどうしようもない孤独。

指先でそっと撫でていくような残酷なやさし
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オルエットの方へ(1970年製作の映画)

5.0

これほどに終わって欲しくなかった時間は、この映画と現実の夏休みぐらいである。『トリュフォーの思春期(おこづかい)』と並びもっとも明快で健康的なヌーヴェルヴァーグ映画の一本と数えていいかもしれない。
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彼女たちの舞台(1988年製作の映画)

4.3

外の世界のほうからなにやら事件性をおびて女だけの秘密めいた時間に迷い込んだような、リヴェット特有の世界観の延長線上だった。男は彼女たちの舞台に決して入りこめず、外部から強引にさざ波や大波をおこしてみた>>続きを読む

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)

3.8

これはちょっとやりたい放題に過ぎる気もするが、映像はグッとくる。グッとくる場面にはやはり驟雨が降るか、川がある。特に雨が降ると、少年少女が耀きだす。ヤケクソのごとく狂気的な長回しもすごい。もう二度とこ>>続きを読む

台風クラブ(1985年製作の映画)

4.5

ひとり夏の相米映画祭開催中、今度は青春映画の傑作。

幼心にとっての台風はイベントだった。地震や津波ほど絶望的でもなく、雷ほど威圧的でふいに身近にせまる恐怖もない。非常事態のほどよい緊張感にさまざまな
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お引越し(1993年製作の映画)

4.5

また子ども映画をみた。まっすぐな目でハツラツと問いかける子役の田畑智子はすばらしいのひとことに尽きるし、感情と呼応するような映像、平成初期の独特な郷愁をくすぐる風景、朝方の淡い水面に祭りの火が燃えさか>>続きを読む

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)

5.0

不自然な状況と態度から大人の偽装された厳格さや倫理の欺瞞を一瞬で見抜く子どもの目、よ〜く知っている目だった。まあそれはそれとして、大切にしたい愉快で神秘的な記憶だってたくさんあるし、美しい思い出はいつ>>続きを読む

天使(1937年製作の映画)

4.3

ここに極まる美貌、ディートリッヒのつめたい仮面が融解した時の息を呑むような美しさを前には、ルビッチの巧妙な演出も、壮麗な家具や調度品も、窓硝子の向こうに流れおちる雨も、三角関係という刺激的な状況も、恋>>続きを読む

ジャン・ルノワールの小間使の日記(1946年製作の映画)

4.1

ブニュエル版とはだいぶ違う、アメリカ時代のルノワール版。おおらかでゆったりとしていて、それでいて軽やかでもある映像のさなかに下男の存在感を中心として露呈される、陽気な残酷さと純粋な暴力にすっかり感心を>>続きを読む

マックスとリリー/はめる/狙われた獲物(1971年製作の映画)

3.8

異様に蒼白い顔に満たされない正義の狂気を醸しながら、着々と犯罪をプロデュースする警官マックス、無邪気にもその心の闇をとらえた娼婦リリー。二人の関係性と緻密な犯罪計画に同時に狂いが生じる決定的瞬間を見逃>>続きを読む

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

4.3

巨大リーゼント軍団珍道中。ジャームッシュ的な居心地の良さのなかにカウリスマキのシュールな笑いのセンスが頭抜けてる。

留置場の格子にリーゼント突き刺さってる絵面いくらなんでも面白すぎるだろう。

黒い罠(1958年製作の映画)

4.5

流石に面白い。あの長回しだけで白米三杯いけるというのに。

重たそうに引き摺られるウェルズの巨躯、それをさらに画面いっぱい広げるようにして執拗に下からあおるカメラ、疲れ切って弛んだ皮膚、目元の隈、諦め
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こちらあみ子(2022年製作の映画)

3.9

海へ向かい、海を前にして立ち止まり、砂の感触を知りながら、足もとに少し波を被り、振り返って終わる。アントワーヌ・ドワネルはそのまま人生を全速力で駆け抜けたけど、あみ子はスキップでもいいから、とにかく進>>続きを読む

素晴らしき放浪者(1932年製作の映画)

5.0

素晴らしき最悪な放浪者もしくは水の妖精。チャーリーが哀れみの涙でアメリカを濡らしたその翌年、ブーデュはフランスで人生に逆襲していた。

実際大迷惑どころの話ではない、この破廉恥の限りを尽くすぶち壊しが
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ミカエル(1924年製作の映画)

4.4

真実の愛を死によって可能にする老画家、大天使の名を持つ美青年、それを皮肉にも堕する無意識型ファムファタール、さらにパラレルに進行する禁断の愛、これらすべてが耽美な美術世界と一体化し、多弁な視線によって>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.7

カスリネンかわいそうやねん…。どれだけの不幸の連続がこの冷却と戯れのうちに漂い、いかに多くの希望がそこに語られているか。冒頭の拳銃自殺の男がカスリネンに予定されていたもう一つの結末だったかもしれない。>>続きを読む

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