ほそじまさんの映画レビュー・感想・評価

ほそじま

ほそじま

映画(1612)
ドラマ(19)

大学は出たけれど(1929年製作の映画)

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自尊心が邪魔をして就活に困った大卒青年とその婚約者の夫婦奔走喜劇。

世界恐慌真っ只中にある1929年公開、この年の大卒者就職率は30%まで下降したそうだ。おそらく風刺だろう。元々70分のうち現存する
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乱れる(1964年製作の映画)

4.2

戦争未亡人の礼子(高峰秀子)が一人で切り盛りして支えてきた亡夫実家の酒屋が、高度成長期の波に飲まれ経営難に。
酒屋の立地条件(資産価値)に惹かれ湧いて出てきた冷酷な親族の計画と、義弟(加山雄三)との禁
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残菊物語(1939年製作の映画)

4.8

冒頭、歌舞伎舞台裏のロングショット、火の玉、光と影の妙。明治初期の東京、歌舞伎音楽。

未熟な若旦那が弟の乳母を妻にするのを反対され家を飛び出し芸事を磨く苦難の道を歩む、史上最も格式高い"許されざる恋
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東京の宿(1935年製作の映画)

3.4

戦前東京下町の工場街を舞台に描かれる、子連れ失業者喜八の宿無し放浪生活。
ある日同じ境遇の母娘と出逢い、人情味溢れる交流を深めていく。

1人の中年男が子を連れ工業地帯をとぼとぼと歩く姿のネオリアリズ
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日本の悲劇(1953年製作の映画)

4.5

戦後の日本社会が、この女を殺しました。


闇屋や熱海旅館の女給としてその身を売ってまで子を育ててきた戦争未亡人と、そんな親を軽蔑し棄て去ろうとする残酷な子達の断絶を描いた日本母捨物語。
無償の愛など
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淑女と髭(1931年製作の映画)

3.7

剣道一筋のバンカラ髭男が、髭を剃った途端に就職口も決まり淑女にモテまくる小津サイレント。良い意味で日本離れしたユーモラスとモダンが岡田時彦(岡田茉莉子の父親)のキレッキレな動きとマッチ。
75分の中に
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生きてゐる孫六(1943年製作の映画)

2.8

木下作品に戦国合戦を描いた映画があったのか(冒頭数分のみ、直ぐに時間経過を表すオーバーラップで稲穂のショット)

三方ヶ原古戦場の開拓と室町後期の名刀"初代関の孫六"争奪交渉を中心に描かれる群像喜劇で
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喜びも悲しみも幾歳月(1957年製作の映画)

3.7

戦前昭和七年から敗戦後、復興の兆しが見えてくる三十二年まで。有人灯台を守ってきた灯台守夫婦とその子供達の半生を描く。

時に齟齬をきたしながら、互いに尊重し合い支え合う睦まじい夫婦を佐田啓二、高峰秀子
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トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)

4.3

3作目:赤(博愛)

「汝、隣人を愛せよ」

無垢で優しく愛に満ちた女学生モデルと、盗聴が趣味の孤独な退官判事による偏愛物。
とある事をきっかけにしてじっくりと深まる二人の交流には妙に艶かしい温度が
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トリコロール/白の愛(1994年製作の映画)

4.0

2作目:白(平等)

性的不能を理由に最愛の妻から離婚を迫られた移民理髪師の愛憎的逆襲計画。
白の淡い光に完璧な優美として滲む記憶の中の彼女と、冷め切った現実との対比が素晴らしい。

歪なバランスで保
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トリコロール/青の愛(1993年製作の映画)

4.4

フランス国旗を構成する三つの色をモチーフにしたトリコロール3部作でキェシロフスキーの遺作。
それぞれの物語が色のテーマに因んで個別に展開されるオムニバス形式だが、3作は同じ世界線・時間軸で繋がっていて
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月世界旅行(1902年製作の映画)

3.5

世界初のSF作品で、「天文学者6人の月面大冒険」という劇的構成をもって大衆映画を確立したともされる歴史的作品。

当然文献として非常に意義深い作品だが、まだ宇宙が想像の産物でしかなかった時代であればこ
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その夜の妻(1930年製作の映画)

3.7

欲しかったのは娘の治療費。
拳銃強盗事件を起こした男と、その夜の妻。
 
 
オスカー・シゴールの短編小説『九時から九時まで』を翻案、小津サイレント期の意欲作。
 
スーツに二丁拳銃、革靴と手錠、割れ
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少年期(1951年製作の映画)

3.5

戦時下、都会人の疎開話。
信州諏訪の田舎を舞台にして、軍国主義に染まりつつある少年と反戦的な両親のすれ違いや苦悩を描いた作品。
周囲と家庭の矛盾に揺れ動く少年の心情機微がとても繊細に表現されている。
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破れ太鼓(1949年製作の映画)

3.6

ザ・封建の頑固親父vs大家族といった構成の中で家父長制の崩壊を描いた木下恵介初期の傑作喜劇。
時代遅れな父親像を風刺するだけでなく、労働者階級で苦労してきた威厳を尊重しつつ新時代に飲み込まれていく哀愁
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人間の條件 完結篇(1961年製作の映画)

4.7

完結篇(第五部:死の脱出・第六部: 曠野の彷徨)

「死ね!貴様は死ね!貴様のような奴は死ね!貴様のような奴が精算されるまでには時間がかかり過ぎるんだ。その間にいい奴が参っちまうんだよ!」



人間
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人間の條件 第3部望郷篇/第4部戦雲篇(1959年製作の映画)

4.7

2作目(第三部:望郷篇・第四部:戦雲篇)

 「人間の隣には、人間がいるんだ」


特殊工人脱走の責任を押し付けられた梶は極寒の北満関東軍に送り出される。
敗色濃厚な最前線で立場の弱い初年兵となった梶
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人間の條件 第1部純愛篇/第2部激怒篇(1959年製作の映画)

4.7

もし仮に映画鑑賞の意義から娯楽性を排除し"教訓"と定めるならば、全日本人が観るべき作品にはこれを挙げたい。
その点「日本のいちばん長い日(1967年)」を遥かに凌駕する恐ろしい映画だった。



五味
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突貫小僧(1929年製作の映画)

3.4

得意の変顔で好奇心旺盛な子供を攫う誘拐犯達(斎藤達雄、坂本武)が、誘拐された事に気付いていないわんぱく坊やに振り回される滑稽な様を描いた小津初期のサイレントコメディ。
もともとは34分の作品だが、他の
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風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

小津のダークサイドも中々にやばい。

木下恵介の「カルメン純情す(1952年)」は一貫性の欠けたイデオロギーに振り回される国民の混沌を狂気のスラップスティックで誇張したものだったが、こちらは戦後日本の
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ロゴパグ(1963年製作の映画)

3.8

皮肉か、或いは機知か。
世界の終わりを陽気な始まりで語る4つの物語。

ロッセリーニ、ゴダール、パゾリーニ、グレゴレッティと4人の監督が世に蔓延る醜悪を風刺的に描いたオムニバスコメディ。
タイトルのロ
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二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)

3.7

空襲を避けて地方に越した夫婦が、戦後貧困の中で優秀な一人息子の将来を案じながら必死に生き抜いていく姿を綴った年代記。
河野道工の歌集「道路工夫の歌」を基に木下恵介が脚本化した作品で、黒澤明の「椿三十郎
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出来ごころ(1933年製作の映画)

3.7

男やもめの日雇い労働者、その同僚であり親友でもある青年、失職して行き場なくした所を助けられた女性。
典型的な三角関係の中で古き良き人情噺を表現した小津サイレント期作品。

男はつらいよの原点とも言うべ
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ザ・プロム(2020年製作の映画)

3.2

自身のプライドに災いし落ち目となったブロードウェイスターが、LGBTQ女子高生の不遇を利用した売名活動で再起を図る。
プロム決行を巡る騒動の中で差別偏見先入観不寛容社会自己承認欲求等その他色々あって大
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風をつかまえた少年(2019年製作の映画)

3.8

2001年、洪水や大干魃により飢饉に見舞われたアフリカ東南部マラウイ共和国。
崩壊寸前の小さな農村で1人の少年が1冊の本と邂逅し、文明利器の本懐を果たした。


人口の98%が電力会社の影響を受けてい
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陸軍(1944年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

終戦を翌年に控え軍国主義の真っ只中にある1944年制作、名匠木下恵介がプロパガンダを装いつつ揺るぎない反戦意志を取り入れた伝説の作品。

作品の舞台となるのは幕末攘夷戦争から日清・露戦争を経て満洲・上
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壁あつき部屋(1956年製作の映画)

4.5

突き詰めて 己に還る哀しみを
放つに狭く 壁あつき部屋


終戦を迎え平和の音も束の間、朝鮮戦争勃発に呼応し再軍備計画が進む日本を背景にした米占領下巣鴨プリズン。
BC級戦犯の獄中手記を基に安部公房
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東京の合唱(コーラス)(1931年製作の映画)

3.5

子役時代の高峰秀子を確認

同僚の不当解雇に憤激して上司に楯突き失職した三児の父親が、世界大恐慌時代の不況の中で再起を目指す姿を喜劇的に描いた小津サイレント期の小市民映画。
恐らく翌年の傑作「大人の見
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不死鳥(1947年製作の映画)

3.2

思い出は不死鳥の如く、永遠の愛。
木下恵介の描く戦争未亡人の回想録で、田中絹代のプロモーション(?)ムービー。

作品の9割を占める回想シーンでは田中絹代がそのまま女学生役を演じており流石に無理を感じ
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コロンバス(2017年製作の映画)

3.8

小津安二郎を敬愛する謎の映像作家kogonadaの長編デビュー作。

なるほど確かに小津作品へのリスペクトを詰め込みまくっている。
モダニズム建築の整然な美を無形の心情や肉親との交流、男女の非対称な関
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秋日和(1960年製作の映画)

4.6

夫の七回忌を終えた未亡人と婚期を迎えた娘の交流に起こる波風と静まりを淑やかな秋の光のように描いた逸年小津作品。
晩春の父娘の関係を母娘に置き換えたような人物相関に過去作品から色々とセルフオマージュした
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お嬢さん乾杯!(1949年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

「どうして涙が出たんだろう」

惚れていた、思えばあの時から惚れていた。

「かつての婚約者に愛を出し尽くしてしまった」「この愛は永遠に戻る事はない」

そう思い込んでいた。
喪失を怖れるあまりに自分
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生れてはみたけれど(1932年製作の映画)

3.8

子を想う平凡な父親のジレンマをユーモラスに描写し、戦前日本の社会不況と対比した小津サイレント期の代表作品。小市民映画の傑作としても名高い。

家庭では厳格で口煩いのに会社の重役にペコペコしている父親を
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女の座(1962年製作の映画)

3.8

東京近郊の荒物屋、病に倒れた老父(笠智衆)を見舞いに方々に散っていた家族が大集合!
成瀬巳喜男が超豪華東宝オールスターを揃えて描いた大家族群像ドラマ。

血の繋がりあれど心冷たい子供達、最も献身的なの
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あなた買います(1956年製作の映画)

3.7

まだドラフト制度が定着する以前、上限金の設定もなかったプロ野球界を舞台に、スーパールーキー獲得に奔走する各球団、スカウトマン、代理交渉人(育て親)とその愛人、肉親達の欲望を莫大な裏金が結び付ける仁義な>>続きを読む

カルメン純情す(1952年製作の映画)

4.1

木下恵介のダークサイドを垣間見た。

鮮やかな総天然色が彩る人情コメディに静かな反戦意思を練り込んだ前作とは一転。カルメン含むキャラクター群の独善的倫理観とミュージックコンプレートの調和が齎す狂気のブ
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