桃色メロディー

モッシュピットの桃色メロディーのレビュー・感想・評価

モッシュピット(2016年製作の映画)
3.8
いつだって、時代のシーンはアンダーグラウンドから生まれる。 モラトリアムから抜け出せないアラフォー世代のぼくは、複雑な気分で物語を追った。
若者の特徴として、無知で実力も伴っていないが、根拠の無い自信だけを武器に突き進み、「自分達の全てを受け入れて欲しい」と叫ぶ。この映画でハバナイの浅見を初めて知ったが、若いなあ、と、そう思ってしまった時、ああ、ぼくも歳を取ったと、沁々してしまった。
間違ってはいない。始めに言ったが、時代のシーンはアンダーグラウンドから生まれ、そしてそれは、青春時代の真っ只中にいる彼等の為にある。彼等とは、演者だけでなく、ファンも含めた若者全員だ。

劇中で誰かが浅見を例えるのに「マイケル・ジャクソン」のようで、「ジェームス・ブラウン」の生まれ変わりと言った。そんな台詞を聞くと、オジサンは苦笑いが止まらなくなる。もちろん、生で観たらまた違った風に感じるのであろうが、少なくても劇中の浅見からジェームス・ブラウンの片鱗は微塵も感じられなかった。
ダンスも歌もメロディーも、たいして上手くはない。パイオニアとなれるような斬新さも感じなかった。それでも様々な人間がリスペクトして、ファンを魅了し、モッシュが生まれる。実際に観ないと分からないカリスマ性があるんだろうが、何より、「おれたちがシーンを作ってやる」と言わんばかりの力強い眼差しに惹かれるのであろう。

勘違いして欲しくないのが、ぼくは決して浅見の音楽を否定している訳ではない。ハバナイファンも怒らないで欲しい。だってぼくもティーンだった頃、くるりやナンバガを聞いたとき、おんなじだったから。きっとピストルズやジャムがど真ん中だった世代の若者も、ビートルズやフーの時代にいた若者も、おんなじだったはずだから。
時代やジャンルが違っていても、若者はみんなおんなじなんだ。何も知らないから、自分達が最強だって思える。ぼくはこの映画をみて、なんだか無性に音楽が聞きたくなった。朝から爆音でロックンロールを流していた。もちろん流行りのやつなんかじゃない、きっと今のティーンが聞いたら「だせぇ」っていっちゃうような古くさいロックンロール。
だから、映画としては高得点。感じるものがあったからね。

ただ一点
映画のコンセプトでもある「ロックンロールにドリームとロマンスを取り戻せ」
これ、一点だけ、マイナス千点のワードセンス。ぼくがまだ鋲つきのライダース着てモッシュしていたティーンの頃だったら、ポスターに唾を吐いていたと思うよ。
ライターが書いたのか浅見が言ったのか知らないけども、ダセェ世間知らずのおぼっちゃん的な台詞。
世界はそんなに狭くない。
君らの知らないところでも
もっとすげーロックンロールを奏でている奴はたくさんいるし、もっと上手くてカッコイイ奴らもゴロゴロいるんだぜ。そしてロックンロールはドリームもロマンスも失っちゃいない、それだけは知っておかなければいけないよ。

ネイチャーギャング、おやすみホログラム、書きたいことはヤマホドあるけど、あくまで映画のレビューなのでこれにて了。
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