yuirie8924

天才マックスの世界のyuirie8924のレビュー・感想・評価

天才マックスの世界(1998年製作の映画)
4.2
おもちゃ箱みたいなかわいさと、繊細な人間ドラマに一発でやられた。
撮り方、構図、色使い、音楽、全部が抜群にセンスよくて、でもベタになりすぎず、観客を"心地よくさせない"絶妙な意表のつき方がたまらない。

コメディの中に、成長、悲哀、バックグラウンドまでしっかり描ききっていて、どこか滑稽で、それがまた愛おしい。恋愛ってこんなもんだよな…としみじみ。

撮影の裏話も興味深い。
ビル・マーレイが自腹でヘリ撮影代を用意したけど、危険すぎて結局撮られなかったとか、細部までこだわるウェス・アンダーソンの狂気じみた美学に脱帽。

マックスの帽子が後半でロシア帽に変わるのも、彼が理想から現実を知り、防御を覚える成長の象徴になっている。
色彩設計も、シーンごとにパステルとビビッドを巧みに使い分け、登場人物たちの背景や感情を無意識にグッと引き立てている。

左右対称の構図や、カメラ固定の手法は、小津安二郎にも影響を受けたと聞き、納得。
でもウェスは"自然"ではなく"人工的な箱庭"を目指していて、それがこの独特の世界観を生み出している。

映画の隅から隅まで、"作り手の愛"が詰まっている。
最後の大演壇とショットもサイコーの心から大好きな一本!
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    yuirie8924

    yuirie8924

    レビュー、批評というより鑑賞後の自分の感情のゆらぎの記録です。大事な作品に対し、気分害したら申し訳ありません。