鉄男

ビッグショット・ダディの鉄男のレビュー・感想・評価

ビッグショット・ダディ(2009年製作の映画)
3.9
子の死を尊厳死に変えようとする父の話。

息子が自慰行為中に誤って死んでしまうが、発見した父は咄嗟に遺書を書き自殺に見せかける。その遺書は学校に出回り、嫌われ者だったはずの息子は神格化される。息子の死が人の役に立っていると思った父は生前書いていたととして息子の日記も代筆するが、その影響はやがて自分の手に負えないところまで広まってしまう。

誰からも好かれず、父までも手に余っていたバカ息子だが、死を発見して遺書を偽装する咄嗟の行動は父親の純粋な愛情に思えた。しかしいなくなった後に息子の人気が出る事の違和感や、偽装した罪悪感は増していく。尊厳死は道徳的や倫理的に難しいところだが、その行動は最後の展開含めて〈綺麗事抜きで〉人間らしい。

また重要なのは、誰も「生前の息子を理解していなかった」から死後に嘘を信じることが出来たのであり、唯一の理解者だったたった一人の友達はその嘘に違和感を感じ続けたということだ。

全員騙されていたわけだが、一連の人々の動きを観ていると人間ってなんとも都合よく身勝手だなとも感じてしまう。

ロビン・ウィリアムズがこの後鬱に悩まされて自殺してしまったのを知っていて観ると、また何とも言えない気持ちもしてくる。傑作とは言わないまでも観て良かったと思える良作。
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