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Plastic Love Story プラスチック・ラブ・ストーリーのmakotoyoshidaのレビュー・感想・評価

5.0
これいまだに中川龍太郎とTOKYO NEW CINEMAの代表作でしょう。
中川龍太郎の個性がギュッと濃縮されつつむき出しになっている作品で、他の作品は本作の濃度を口当たりよく薄めた変奏曲にすぎないとさえ思ったり。
それくらい生々しくてインパクトが強い特別な作品だと感じる。
こんな作品はTOKYO NEW CINEMAがなければ存在してなかったのではないでしょうか。

Plastic Love Storyは、良くも悪くも「中川龍太郎らしさ」の全部入り。
すごい綺麗な女の子たちがいて、美しい空と海が広がっていて、かっこよく電車が走っていて、登場人物は激しく人を片想いしたり妄想したり不貞腐れたり独り相撲したり土下座したりとにかく思い込みが激しく情熱的で、かと思えば突然バレエを踊り出したりしてその踊りがすごく綺麗だったりするんだけど、これって映画というものの魅力そのものでもあると思う。この作品を小説にノベライズしても全然面白くないと思うんだよね。

その上で、僕が本作を中川作品の中でも特別に感じる要素その1は、映像とか音響とかストーリーというより、登場人物たちの発する台詞に込められた言葉の力。ナイフのように鋭いセリフが中川作品の中でもダントツに多い。
それは鋭いんだけど、相手とのコミュニケーションをとるための言葉ではないから会話は成立せず、ただ相手を傷つけるだけ。一方的な情熱は相手の気持ちとの温度差の前にすれ違ったり空回りするばかり。
(なお僕がいちばん好きなセリフは、「カメラがないと喋れないの?」かな。)

その2は、富山に住んでる奏恵役の山脇夕海さん。この人の存在感すごい。
あの表情で、セリフ棒読みっぽい感じで、ちょっと頭でっかち的に哲学的かつ相手が傷つくような超キツい言葉を発するのが、ホントにちょっと頭おかしい子っぽくてリアリティ感じて怖いんだよね。
それでいてすごく綺麗で、最後に海岸で踊っている彼女とか神々しくてドキドキしてしまいます。

とにかく過剰な映画で、観てて心地よくはなくて家族づれとかデートには薦められないし、クイーンズギャンビットのように抜群に面白いというわけでもないし、映画としての完成度も高くはない気がするけど、なんか突出したシーンやセリフとかが多いんですよね。すごく刺激的だし、僕は映画、特に若い映画作家には刺激を求めているので。
こんなに過剰な映画は特別な才能を持っている人間にしか作れない。映画監督になるのが夢だった僕にとっては嫉妬と羨望の対象ですよ。
7年前くらいに僕はこの作品を観て中川龍太郎は天才だと思いました。
早くこの作品を超えるオリジナル作品を作ってほしいです。
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