TaroYamada

がじまる食堂の恋のTaroYamadaのレビュー・感想・評価

がじまる食堂の恋(2014年製作の映画)
1.0
ストーリーが全てファンタジーかと思える程にリアリティが無く、脚本家や監督が頭の中で描いている妄想をストーリーにしかしてないのではないかと思える程に全てが活きてない

登場人物像が平板でディテールに乏しく、劇中に記号としてしか存在しない
主要登場人物として、大衆食堂をおばあから継いだ孫、駆け出しの画家、東京の女子大生、IT会社社長が出て来るが、リアルな言葉、息遣い、思いは伝わらない
特に主人公の元彼設定の5年間音信不通の画家(?)の存在は深刻で、今度個展を開くからと作品制作を口実に帰郷し、復縁を迫ろうとするが、外見上それを演じる様に見せかけていても余りにもそれに見えない
ストーリーの肝である主人公と最初は不審者だったIT会社社長との出会い、関わり方についても制作者の都合良い展開でしか話が進行せず、予め決められたレールを走り続ける
そんなに簡単に人と人は簡単に親密にはならない、主人公がお人好しで何でもかんでも受け入れてしまう様な描写も無いまま進むだけに(どちらかと言えばむしろ逆の性格と思われる描写が)、余計に都合の良さしか見えてこない

折角の沖縄や名護を題材にする映画にも関わらずその必要性を感じない、それ位に沖縄が名護が描かれない、地元の大衆食堂が舞台にも関わらずだ
魅力的な景観、沖縄独特の大衆食堂文化、そこで供される美味しい沖縄料理、それらに根ざす沖縄の人々…何一つ掘り下げて描かれる事は無く、まるで書割の如く全てがペラペラに見えてしまう

劇中にフックにしようとしている仕掛けが複数箇所あるが、役柄それぞれの人物像が死んでいるから、舞台設定の必然性が無いから、滑っている様にしか見えない

物語を魅力的に描けなかったとしても、地元名護の肝いりによる映画制作なだけに、せめて沖縄や名護の魅力的な情景を映し出して欲しかった

主演の波瑠は透明感もあり、フォトジェニックで美しく魅力的なだけに非常に勿体無く感じる、それでも波瑠ですら大衆食堂の店主のリアリティは全く感じない、見た目が良くても、沖縄や名護という舞台装置の中に息づくキャラクターには見えない
エピソードもあれこれ手を広げ過ぎだろう、主人公達4人の恋愛模様を描こうとしているが消化不良で進んで行くので、最後の展開も唐突でしか見えない、ましてどんな時間軸の推移をしているのやら、名護と那覇は80km近く距離が離れているのだが…虚実の使い分けとしても知識の無い観衆をバカにし過ぎでは無いか

制作者が頭デッカチになるばかりに自らが描くストーリーを重視したばかりに、ディテールの積み重ねも無く、リアリティの無い映画になってしまった典型と言えるだろう