アリ

筑波海軍航空隊のアリのレビュー・感想・評価

筑波海軍航空隊(2015年製作の映画)
3.7
「陸軍登戸研究所」でもそうでしたが、こういった戦争体験の聞き取りや資料保存が地元のかたたちによって担われているのは本当に素晴らしいことだと思います。
また、体験を語られる元航空隊のみなさんの言葉の率直さ、仲間を悼む思いもとても胸に迫るものがありました。

一方で、身近な個人的体験として語られてしまうそれは、日本軍が抱えていた様々な問題自体への批判的視点を難しくしてしまう気がしました。
(ガソリンがなくて自転車で編隊訓練していたとか、1000時間必要な訓練を200時間くらいで出撃してたとか、そもそも学徒動員の素人に超ハードな急降下をさせるので結構撃ち落とされたとか、まさに当事者が「よくぞ戦争など起こしたなと」と呟くところもあるのですけどね)

戦後も、戦争での犠牲者を思うことがしばしば戦争そのものの美化やすり替えに使われてきたこと、沖縄のように自身の死の意味を考えることすらできないだろう状況におかれた民間人の存在も考えると、なおさらあのアイドルグラビアのごとき爽やカッコイイ航空隊の写真を、美しいものと感じるわけにはいかないなぁという気持ちになりました。
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