Miver2

ホワイトリリーのMiver2のレビュー・感想・評価

ホワイトリリー(2016年製作の映画)
3.9
時に美しい花のように咲いて魅せるエロスと、純粋な欲望と行き場のない気持ちが露わになる中で、それぞれの心が交差する人間模様を丁寧に描いていて面白かったこの作品。

何よりも山口香緒里の演技が圧倒的な存在感を放っていたのが凄かった。
何処か狂っていて、何処か壊れているけど、ある種の美しさがそこにはあったように思う。
そして愛する人を想うその気持ちの行き先がなくなった時の閉塞感とその姿は、どうする事も出来ない悲しみと、やるせなさが距離を作ってしまうその光景に露わになる。
観ていて何とも言えない気持ちになった。

相手を想う気持ちは誰よりも想っているのに、その気持ちは受け止められる事なくすり抜けて行ったり、その距離は離れて行くばかりだったり。 
気持ちの行き場の無さは、ある種居場所の無さをじわじわと感じて行く所があって。

あと登場人物達それぞれが受け止めてほしい所は別の所にあるその光景には切なくなったな。
思わずクスッと笑いそうになった所もあるけど、その気持ちがすれ違うだけで受け止められる事のないその姿に釘付けになった。
最後はあれで良いのか悪いのかは分からないけど、ある種の愛の形がしっかりと丁寧に描かれていたのが美しかったな。
それがまたとても深い余韻を残してくれる。

この作品はある種の愛憎劇でもあると思うのだけれど、洗練された描き方でその人間模様を描き切った物語はとても見応えあって良かったな。

久し振りに観た中田秀夫監督作品、その描き方やカット割りもまた見事で面白かったです。
Miver2

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