二兵

人間らっこ対かっぱの二兵のレビュー・感想・評価

人間らっこ対かっぱ(1985年製作の映画)
4.2
本日は成人の日。成人式をテーマにした映画ってあったっけ?と思いながら、記憶を辿って着いたのがこの作品。

『監督失格』で有名な平野勝之氏が、1985年に8ミリフィルムで自主製作で撮った、伝説的な映画。

監督、面白いけれど実用的では無いAV(失礼)や、色々過激なドキュメンタリーを撮られており、この作品も以前、一度だけ目にする機会があったのですが、いやもう実に凄まじいの一言でした。

話の内容は至ってシンプル。


時は1月。地上で若者たちがめでたく成人式を迎え、皆幸福に包まれている中、会場近くの運河(下水道にしか見えないのは置いておこう)では、謎の生命体・人間らっことかっぱが、いつ果てるともしれない激戦を、人知れず繰り広げていたのだ…という物。

この二体が何故戦うのか、そもそもこいつらは何者なのかという説明は、劇中では一切なされない。

撮り方が何とも熱量に溢れていて、レンズが水でずぶ濡れになるのも構わず、らっことかっぱの顔面に肉薄、水滴やら泥やら血糊やら良く分からないものを飛び散らせながら、そしてブレッブレになりながらも、ひたすら暴れる両者の姿を捉え続けていく。

そのうち、モスラを10倍くらいグロくした様な、バイオハザード的な謎の生命体が乱入し、3匹の戦いは、混迷を極めていくのだった…。

話の筋などどうでもいい、自分はコレを撮りたいという衝動に満ち溢れた作品で、正に、成人の日を迎えた20歳の皆さんにも観て欲しい、そして初期衝動というか、初心を忘れないでいて欲しい。

もちろん、その衝動をあらぬ方向に向かわせるのはダメですが…良い意味での反骨精神というか。

非常にマニアックな作品なので、そもそも観たことの無い人の方が多数だろうし、名画座での監督の特集上映くらいしか観る機会が無い。

しかし、観られる機会があるなら、是非観て欲しい作品です。

自分がもし映画を撮るとしたら、こういった熱のある作品を撮りたいなあと思います。

いつかまた観られないだろうか…。
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