ボナペティ男

ゴッド・オブ・ウォーのボナペティ男のネタバレレビュー・内容・結末

ゴッド・オブ・ウォー(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 こういうのでいいんだよ。こういうので。

 乱暴狼藉横行闊歩、悪いことならなんでもやります近藤産興的倭寇が明国内で好き放題。彼らを撃退させるために選ばれたのはこの男——。征伐派のニューウェーブ、戚継光(チウ・マンチェク)。
 二万の軍勢からなる巨大な倭寇を、三千人程の寡兵で撃ち破ることができるのか……。ジェラルド・バトラーのアレをチウ・マンチェクに置き換えたアレ。

 二時間を超える作品は基本長く感じてしまうのだけれど、全体的にシーンに無駄がなくじっくりと楽しめた。
 中国映画特有の抗日映画とは一寸異なり、ただの勧善懲悪ではなかった。明と倭寇双方の視点を描き、日本人をただひたすらの匪徒に貶めていない。それぞれに格好よさがあるのはいい。

 倉田保昭の智将っぷりが凄くいい。豪放磊落な語り口に、思慮深い洞察。脇を固める慢心野郎の侮り癖がより引き立たせる。
 チウ・マンチェクの憂いのある表情がなんともグッとくる。考え込む時が角度によってかなり柳葉敏郎。槍術がスタイリッシュ過ぎる。幾度も登場するが無限に見ていたい。それ以外の各種武技術も見事。

 サモ・ハン・キンポーとチウ・マンチェクの手合わせで見られる棒術はすごい。どちらも動きがキレすぎている。サモ・ハンの受けスタイルが格好いいし、チウ・マンチェクのめちゃくちゃ低い構えからの突きも格好いい。
 乱戦も堪らない。両軍入り乱れての合戦はとんでもない気合い。殺陣もいいし、気迫に満ち満ちている。戦術も見応えがある。人間の量がすごい。なんぼ金を集めればこれが撮れるんだ。寧海、台州、新河。あっちこっちが戦場。ものすごいド派手。どうして日本映画はこれをやらないのか。
 義烏兵らの訓練シーンが女子バレー部みたいでいい。倭寇の進軍が傾奇ジュリアナ東京でいい。
 役名は基本わからんけれど、それぞれに個性がある。戚継光の嫁さん(レジーナ・ワン)めちゃ美人で超強い。剣捌きが見事。薄顔の石原さとみ感がいい。
 撤退する倭寇やら松前藩武士やらにもドラマ性があったり。小出恵介はもう馬謖譲りの早計で何かしでかしそう感がすごい。しでかすけど。
 木幡役の木幡竜はレジェンド・オブ・フィストより画が映えてる。倭寇側の太秦系アクションは楽しい。

 最後の最後にチウ・マンチェクvs倉田保昭。スタントはありながらも倉田保昭の動きすごいな。この時70歳とかでしょう。化物か。鷹揚と構えるの渋い。チウ・マンチェクの剣術からステゴロまで見られる。

 めちゃくちゃに面白い。アクションのバリエーションが豊か。アクションに戦にドラマ性にジャンルぶっ込みのイオンモール映画。数多の人に観てもらいたい。
 エンディング・テーマが流れた瞬間に爆笑したくらいに浮きまくっているところ以外に不満がない。
ボナペティ男

ボナペティ男