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魔法にかけられて2のSHOHEIのレビュー・感想・評価

魔法にかけられて2(2022年製作の映画)
3.2
ジゼル姫とロバートが結ばれてから15年の月日が流れた。ふたりの間にはソフィアという娘が生まれたが、ロバートの連れ子であるモーガンとの距離は遠くなる一方。心機一転、ニューヨークから郊外のモンロービルへ引っ越しをした一家。しかしモーガンは新しい暮らしに馴染めず、ロバートも電車で通勤を強いられる毎日。ジゼルも町の有力者マルヴィーナとの関係がぎこちない。彼女は故郷アンダレーシアから送られた願いの杖を使ってより良い世界に変えようとする。町はおとぎ話の世界に一変するがジゼルには悪い継母の一面が見え始め…。

原題は『Disenchanted』。「魔法が解けて」のタイトルが示すとおり、前作で永遠の幸せを掴んだように見えたジゼルの家庭に危機が訪れる。オリジナルキャストは一部のキャラクターを除いて続投。残念なのはモーガン役が代わってしまった点。どうしても「前作とは違う女優が演じている」という事実が透け、キャストを疑似家族として見たときのマジックが解けてしまった印象。家族についての映画であるだけになおさら。決して演じるガブリエラ・バルダッチーノが悪いわけではない。前作は2007年の作品で、今のディズニー作品と比較すれば本当の意味で脱構造に踏み込めていない。ここ10年でディズニー・プリンセスの在り方も能動的に幸せを掴もうとする存在へと変化した。『Disenchanted』のタイトルを初めて見たとき現代的なアップデート、つまりおとぎ話的な展開から脱却し、現実的な経験を経た上で本当の意味での幸せを受け入れる作品になるのではないかとワクワクした。しかしどうやらその期待は裏切られた。前作の肝「おとぎ話の世界に住むキャラクターが現実世界のニューヨークへ現れたら」というシチュエーションはジゼル姫のユニークな言動と周囲のシニカルなギャップで楽しませてくれる目から鱗の発想だった。一方今作は現実世界をおとぎ話の世界に変えてしまうという逆転の発想で舞台を作っているが、これが新鮮味がない。というのも近年の実写化作品『シンデレラ』や『美女と野獣』などでメルヘンな世界観と実写キャストの融合は何度も目にしているからだ。物語にも幾分問題がある。クライマックスは現実主義だったモーガンが魔法を使うことによって物語に決着がつけられるが、今の時代だとこの展開は一層ご都合主義感が漂ってくる。求めていたのは現実を直視した上で本当の幸福を手にするストーリー。おとぎ話からの脱却を期待していたはずが、結局今作も人々にふたたび魔法をかけるおとぎ話で終わってしまった。それって前作と同じことやってない?メッセージとして進歩していないような。ジゼルが悪い継母へと変化する演出も前作のイメージを覆すような魅力はなく、またヴィランのマルヴィーナも大して悪いことをしていないので存在感が小さい。モーガンとの関係修復に関するストーリーも能動的な行動から来る要素はほとんどない。良かったのは前作でカットされたナンシーとエドワードのミュージカルシーンが復活したぐらいか。それでもアラン・メンケンの音楽は弱かったが。
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