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復讐者のメロディのArkのレビュー・感想・評価

復讐者のメロディ(2018年製作の映画)
3.6
2023-33
元受刑者のダニーは、モーテルでクララとその母親と出会う。クララの父親は刑務所におり長い間父親に会えずにいるため、寡黙なダニーに興味を持ち、会話するうちに心を通わせるようになる。そんなある日クララに悲劇が起こり、ダニーは自分の中に眠っていた凶暴性を制御出来なくなる。


英題は“A Bluebird in My Heart(私の心の中の青い鳥)”
“私”とはダニーのことで、“青い鳥”はクララだと言える。

実はフランス語の題がある。
“Tu ne tueras point
(汝 殺すなかれ/殺してはいけない)”
こっちが原題かも。

ネタバレ↓



何故か邦題は復讐系アクションのようになっている……。渋いオッチャンが銃を持ってるポスターからは確かにそんな雰囲気があるけども。実際はそんなことはなくて、基本的にはとても静かな映画。音楽もあまり流れない。

クララは父親が傍にいなくて淋しい。母親にも父親にも愛されてはいるけれど、満たされないクララはタバコや麻薬で癒しを得ている。
そんな時にやって来た謎のオジサンもといダニーは寡黙で全然喋らない。しかし好奇心旺盛なクララはダニーに寄っていく。優しくて面倒見のいいダニーに父親の影を見ていたのかもしれない。

ダニーは人と距離を置きたがるが、とても優しくて情に厚い男。女の子の裸からも目を逸らすし、胸の傷跡をクララに見せられた時も「見せるんじゃない」と目を逸らす。助けた時クララが自分の部屋で寝てしまってもそのまま寝かせてあげる。
しかし、人一倍優しい性格の裏には人一倍人の痛みがわかるという面があり、それが仇となって無意識に自分の首を絞めてしまうのだ。

それが現れていたのがレイプした売人を殴り殺す場面。刑務所に逆戻りになるかもしれないのに。
ラストの麻薬の売人(かギャングか何か)に襲われて返り討ちにする場面ではダニーが隠し持っている凶暴性が表れていたように思う。

優しさは他人にとっては甘いけれど、優しいのは人の痛みが分かるからで、その分自分の心が痛むわけで。

確かに復讐者と言えばそうだけども、邦題のせいで復讐アクション映画かと思ったけど真逆の超静かな映画だった。
静寂の中に突然暴力がぶち込まれるところはレフン映画のようでした(笑)

主演のローランド・ムーラーという俳優さん、他の映画で何度か見たことあるみたいだけど全く覚えてなかった……。
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