真面目なのかバカなのか、絶妙な隙間にぶっ込んでいくブラックユーモア溢れる作品。まあどちらかと言うとバカ寄りだけど、単なるコメディーの枠には決して嵌められない。現代社会に鋭くもジワジワと切り込んでくる。観てる間は気付かなかったことも、鑑賞後にうだうだ考えてたらハッとさせられたことが多々あった。知らない間に斬られてた感すごい。
現代の人間って、恐ろしいほどに愚かだなと思った。皆がこぞって飛びつくのは、セレブの恋愛沙汰やゴシップ。地球が滅亡するのに比べたら、いかに取るに足らない話題であるかは明らかなのに、メディアはエンタメが大好きな大衆に合わせたコンテンツを提供し続ける。
"空を見上げない" すなわち現実を見ない人々がどんどん自らの首を絞め、全体の状況を悪くしていく。 無防備で楽観的な人間たちの目の前に、いつの間にか危機が迫ってきているという様子が何とも滑稽で… あれだけコミカルに描かれているけれど、実はバカにされてるんだよな、私たち。
自分の利益しか頭にない政治家、アクセス数に囚われ本当に伝えないといけないことから目を背けるメディア、影響力のある人の発言に扇動される人、大衆に流されているだけなのに自分も社会の仲間入りが出来たかのように勘違いする人。現代社会に対する皮肉が止まらない。
デモや暴動、大統領選のスピーチ、今1番ホットな歌手をとりあえず歌わせる… 現代社会、いやもっと具体的に、「アメリカ社会を風刺する」という意図が、いかにもな描写で伝わってくる。
またインターネット社会、コロナ禍の社会、ここ2年ぐらいの間に立て続けに起きた抗議運動など、数多くのことからインスピレーションを受けている作品だった。暴動のシーンがドキドキするほどリアルだったのもそのせいだと思ってる。