このレビューはネタバレを含みます
荒っぽい父親。内気な娘。会話もままならない夕食。一人娘を亡くした父親は、万引きの疑いで娘を追いかけ続けたスーパーの店長を追い詰めていく。
全員が均等に起因になっていて、全員が均等に背負わなければならないような状況下の中でそんなバランスは取れる訳もなく、娘を失った父親は矛先を周りに向け続け、なぜ娘が死なないといけなかったのか原因を突き止める為奔走する。
ただ、周りの話を聞かず一方的に物事を決めつけ行動する姿に娘との距離の原因が見える気がした。
スーパーの店長は自分が死のきっかけを作ってしまった事実に動揺しており、そこに父親の圧力が重なりかなり疲弊している中、パートの中年女性の不要な正義感に更に追い詰められる事態になっていて見ていてとても辛かった。
このパートの中年女性がかなり厄介で自分が必要とされているという自認が暴走気味でお節介の域がかなり超えていて、その異常さに辟易してしまった。
その2人を中心に事件を面白がり連日取材、報道を繰り返すメディアの軽薄さと切り取りの悪意。事故に関わってしまった運転手の女性の重責を負った姿。
これらのどれもが一向に進展していかず、精神的に追い込まれるだけの日々を送っていて、なんとも無常な気持ちになった。
時間経過とともに関心の薄れていくメディアの冷酷で浅はかな様子を見て、世の中は常に鮮度の高い情報に振り回されているのがありありとわかった。
父親は亡くして初めて娘と向き合った。
とても遅いがそれがこの父親ができる最大限の弔いだし、自分の心の整理に必要な事だった。
娘が授業で描いた複数枚の絵の中の一枚が唯一自分と繋がっていた証になっていてそれが救いになっていたのがとても良かった。