うつろあくた

ウイルスのうつろあくたのレビュー・感想・評価

ウイルス(2019年製作の映画)
3.7
【あらすじ】
2018年のケーララ州カリカット。原因不明の高熱と嘔吐で病院に運び込まれた男性は、程なく死亡する。手当てをした看護師の女性も同じ症状で倒れる。未知の伝染病に人々がパニックに陥り、治療法が見つからないなかで、対策本部が発足する。実話に基づくメディカル・スリラー。(IMW2020サイトより)


ついラブストーリーや感染した子どものエピソードなんかで飾り立ててしまいそうなところだが、いたずらに感動や恐怖をあおらないずっしりとした展開。

派手な社会パニックではなく、医療現場と対策本部の働きぶりをじっくりと描く。特に感染経路を確定させるための地道な捜査が圧巻。感染者らひとりひとりの行動を繋いでいくところは、まるでミステリーもののようだ。捜査の間にも新たな感染者は出る。もしその感染者が現在確認中の繋がりから外れていたら、また新たなクラスタの発生ということになる。観ているこちらもどうか接点が見つかってくれと祈るような気持ちで展開を追う。

冷静な展開でありつつ、感染者も、医療従事者も、対策本部も、誰もが皆「人間」なのだと感じさせる細やかな描写も見事。登場人物はみなドラマを持っていて、ウイルスとの戦いの中でそれが垣間見える。そのさりげなさがかえって戦う人々を身近に感じさせてくれる。良質の群像劇。

※どうでもいいこと。女優さんが瀕死の病床でもバッチリメイクでちょっと笑ってしまった。この作品に限らずよくあることかな。