失礼だな純愛だよ

劇場版 呪術廻戦 0の失礼だな純愛だよのレビュー・感想・評価

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
5.0
本当におもしろい。見やすい。劇場と配信合わせて10回は見たけど全く飽きない。
バトルものとしての完成度、キャラクターの描き込みの緻密さ、この一作で芥見先生の才が堪能できる。


緒方恵美さん、乙骨憂太に命を吹き込んでくださってありがとう……。貴方のために生み出されたキャラクターです(きっと)。
一部では乙骨シンジと揶揄?されていたようだけど、そもそもどう見てもオマージュ。観客がそこに碇シンジを重ねるのは計算ずくだろうと思う。エヴァシリーズへのリスペクトを前提として、乙骨とシンジくんとの分岐を描くことが本作の大きなテーマであったはずだ。
「力を得た」こと自体が戦う理由だったシンジくん。望まない力で他人を傷つけることを嘆き、背負わざるを得ない大義の重圧に最後まで苦しんだ。序盤の乙骨はシンジくんと全く同じ、緒方さんの演技も限りなく碇シンジである。
しかし、乙骨憂太は人に恵まれ、その力を「自分たち」のために使うことを自ら選び取った。里香ちゃん、友人たち、恩師、身の回りの人への愛のみを行動原理としたことで、迷いがなくなる。後半の声色はもうシンジくんのそれではない。
エヴァンゲリオンという文化的前提と緒方恵美さんの演技力とが成した美しすぎる技巧に感服です。