8Niagara8さんの映画レビュー・感想・評価

8Niagara8

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キッド(1921年製作の映画)

4.1

血は繋がらずとも、親子なる関係は築かれるわけである。万引き家族にも通ずるような精神性。
放浪するチャップリンは卑しいかもしれないが、勇敢で、ファニーで、愛に溢れる。
ファンタジーも感じさせる半ば強引な
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AWAKE(2019年製作の映画)

3.7

目に見えないけど途轍もなく熱い。
吉沢亮と若葉竜也が対照的ながら、好演で大仰にならずに自然で。
過去からの因縁やリベンジ、プロとしての意地、いろんなものがありながら、結局将棋への情熱と負けず嫌い。
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

3.6

ホラー演出に拍子抜けしつつ、その中で何とか普遍性を見出す。とはいえ、ホラーになる展開も不自然ではないように辻褄は合っている。
暗いながら傍観的な映像は見易く、気付いたらエンディング。
人の温もりを追い
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絞死刑(1968年製作の映画)

4.0

かなりどぎついブラックコメディ。
と言いつつも、この世界の歪みを看破している辺りは流石である。

映像はかっこいいし、長回しの見応えがある。
ただいささか冗長さを感じ、メッセージ性はかえって薄まったが
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放浪記(1962年製作の映画)

4.6

高峰秀子の名優たるわけはこういうところにあるよなと思いながら楽しんだ。
感情豊かに俗人的なキャラクター。
彼女が林芙美子を演じ文字通り記念碑的作品である。

産みの苦しみとは正にこのことで、全編の多く
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.2

こりゃ凄いわ。
良作サスペンス。

途中だれるかと思いながら、寧ろ終盤に向けて加速度的に面白くなっていった。
筋がいいし、ある種二転三転するのもテンポ良く。
いい意味で軽いコミカルさはありながら、中身
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四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

いささか演出が過剰に思いつつ。
カメラを向けることは眼差しを向けることである。そこから逃げ続けるのは彼の弱さである。目の前の人に向き合うことはない。
画面に蔓延るセルフィッシュはなかなか強烈で、人間の
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.8

ケイリー・スピーニー良かった。
美しいし、画面を一層映えたものにする。

概観を捉えた部分もあるけど、『エルヴィス』と対になるような感じが個人的に好印象。
プリシラという人間の悲哀に満ち満ちていて、彼
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ZOO(1985年製作の映画)

3.7

猥雑な雰囲気は何故か引力が強く、脈絡もないようなのに不思議と見続けられる。
シュールだけど、台詞の感じが好きだった。
それらに加えて、マイケル・ナイマンの仕事を筆頭に音楽の攻撃性が凄まじい。
変態性た
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.9

めちゃくちゃホラーなテイストも特に後半はあるけど、一周まわって楽しんだ。
もう文字通り狂女なんだけども。

ショットが強烈であまりに良くて、序盤で傑作だと確信してしまった。
内容より映像が素晴らしくて
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ペナルティループ(2024年製作の映画)

3.4

題材的にも仕方ないのかもしれないが、中盤トーンダウンしたように感じた。
とはいえ、纏め方は良かったかな。
極限の状況で互いに通じ合う感じ。
それだけにシステムのネタバレのチープさが目立つ。

若葉竜也
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レイクサイド マーダーケース(2004年製作の映画)

3.6

特に展開はなく、そんな東野作品が好きなわけでもないが、結構面白く観れた。
だから話に映画的なものはそこまで感じないながらも、画は面白いし、ラストは好き。
東野圭吾を調理してこれは上出来と言えるかもしれ
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ニンゲン合格(1999年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

淡々と展開されるストーリーだが、観察的な視座の末、齎される顛末には妙なカタルシスを感じる。
生きることは何なのかという根源的な疑問を丁寧に描く。
明るさを抑えた黒沢清らしい映像は彼等を突き放すようで、
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童年往事 時の流れ(1985年製作の映画)

3.9

生きることと死ぬこと。表裏一体であり、かけ離れているようでもあり。
長い人生の一部を切り取るが、それ故か刹那的にも思えるが、はたまた永遠も感じさせる。
後の人生が短い者と長い者が同じ空間に居合わせるこ
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フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

4.4

デビュー作にして、このクオリティ。いやはやノーラン凄いと素直に思わされた。

3人の関係性、時間軸を自在に操り、素晴らしいテンポ感で展開していく。
モノクロの冷たい質感の映像が一層シリアスさを増幅させ
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.3

脚本すごい。オリジナルでここまでやるとは。流石である。
いささか大仰な節回しを筆頭にして、古典邦画をオマージュした演出が個人的には良かったと思う。

本当にあらゆるショットが素晴らしいし、黒沢清作品ら
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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.3

本当に文字通りラディカルでパンキッシュ。
現代の寓話である。
映像も音も攻撃的でヒリヒリする。
徹底した長回しは圧巻で、度々のヤーノシュの顔のクローズアップが見事。そこでは決定的な台詞はないが、映像そ
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憂鬱な楽園(1996年製作の映画)

4.7

中年のチンピラ。ホウ・シャオシェンはチンピラ撮らせたら一級品だ。
彼と彼の周りのくたびれた停滞感。これを視覚化させるのうますぎる。
長回しがかえって気怠さも見事に切り取り、暗さも含めて映像がよりダウナ
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イン・ザ・スープ(1992年製作の映画)

3.0

ジョーがドタバタで掻き乱すんだけど、それでなんかスティーヴ・ブシェミの良さが半減しちまったように感じた。
オフビートが嫌なわけではないが、この映画では全然乗り切れず。

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)

4.5

ひたすらに反復。
不思議と見続けられた。この独特な世界に没入するかの如く。
ドキュメンタリーとフィクションの境界をあっさり超えてしまう。
にしてもラディカルで、映像に映る建物や風景がとても攻撃的である
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ニーチェの馬(2011年製作の映画)

4.2

極限なまでに厭世的。
我々の生きる社会、俗世からはかけ離れた二人の日々は我々が文明を通じて失ったものを感じさせる。
しかし、極限状態にあって、生き延びることは簡単なはずもない。
とはいえ、異なる性質の
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桜桃の味(1997年製作の映画)

3.6

人生の諦観はこちらから見れば、随分と投げやりで、なかなか迷惑でもある。
それに死ぬのではなく、生きることが嫌な感じで、そこがまたどうも中途半端でもある。
映画のテンポ感もそこに引き摺られているよう。
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EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

4.9

凄すぎた。
映像的に図抜けていて、あらゆるショットがかっこいい。決まりに決まった構図、カメラワークが美しく、どれも印象に残る強烈なエネルギーを持つ。
閉鎖的なバスや部屋から解き放たれるように開ける画面
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裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.1

雄弁な映像と説得的な脚本。
ドライヤー流石である。
ジャンヌのクローズアップはしつこいまでに徹底されていて、作品のベースを作りながらも、カットバックが印象的になるようなコントラストの作り方。
終盤20
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プレステージ(2006年製作の映画)

3.9

なかなかSFチックなところもありつつ、人間の業を切り取り面白い。
映像以上に脚本が魅力的で、してやられる。
ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベールが見事で、どこか孤独感のあるキャラクター合わせ鏡の
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切腹(1962年製作の映画)

4.2

仲代達矢はやはりこういう役が一番いい。渋み、胆力、凄み、あらゆる点において魅力的である。
いやはや脚本が見事。流石である。
切腹ひいては武士道そのものの虚飾性をクリティカルに看破する。
極めて禁欲的に
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ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

4.7

痛々しくそれでもあまりに破壊的で美しすぎる。

確かにエイダが置かれた状況は全幅のシンパシーを抱くものではないが、一人の女性として生きる様は我々の感情を増幅させる。
時代性を踏まえれば、不倫であるが、
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WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)

3.7

かりそめの二人の関係を盗み見るような感じもありつつ、二人に寄ってどこかリアリスティックなタッチ。
素朴ながら情動で愛おしくもあり、痛切さもある。
それでいて内容も詰まっている。
抑制的な演出が奏功し、
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(1968年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

後半なんかトーンダウンした気がする。
首を持って帰らなければ、というどこか事件がどっか行ってしまったような展開に面食らってしまった。
前半のテンポ感と感情表現が良かっただけに、ちょっと楽しみ切れなかっ
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.7

エデュプス・コンプレックスは相変わらずここでも引き摺られ、この描き方がうまい。
綱渡りをするかのような絶妙なバランスで保つヒリヒリとした空気感。
血統という運命論的な展開と血で血を洗うような終わりの見
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スモーク(1995年製作の映画)

3.7

群像劇になってとっ散らかることなく、あくまでクローズドなのがいい。
皆それぞれが家族との関係に難しいものがあるけれども、その外で出会う人たちへの優しさが格別。
嘘でも素敵なオーギーの話は友人の為にある
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

俳優陣が素晴らしかった。重厚なる人間劇。
キリアン・マーフィー天晴れである。

個人的にはこれを反戦映画としては認められない。否定的な意識付けはありながらも、広島長崎に直接的、自明的に触れることは避け
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肉体の冠(1951年製作の映画)

3.7

すごいファム・ファタール。
男の人生をこうも狂わせてしまうのだから、褒められたものじゃないが、大したものである。
とはいえダンスシーンは魅力的で、迸る暴力も含め、映像がエネルギッシュ。
クローズアップ
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ニックス・ムービー/水上の稲妻(1980年製作の映画)

3.8

ニコラス・レイが映画そのもの。
カメラに映る彼がやたらとかっこいいのである。
ドキュメンタリーと現実の境目などどうでもよくなってくるほど。
ヴェンダースのショットいいよねっていう、屋内外の構図。

処女の泉(1960年製作の映画)

4.4

これまた神の沈黙。
とはいえ、人間世界の惨さと正当性をありありと描く。ラストシーンがあまりに美しすぎるが故の残酷なまでのコントラスト。
そしてそこに神と信仰が交錯する。
彼らや家族に降りかかる災難、不
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