シートンさんの映画レビュー・感想・評価

シートン

シートン

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(1963年製作の映画)

3.4

恐怖感、緊迫感に引き込まれる
しかし、ミステリーとして観ていため、ラストはあっけない感じを抱いてしまった。

鳥をいろいろなものの象徴として捉えることもできるが、おそらくそれはあまり意味のないことなの
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ゆれる(2006年製作の映画)

3.7

すべては、母親がいなくなったことから始まっている、
兄弟の母親が亡くなって、兄は洗濯・炊事のすべてを担う。弟は帰郷する。しかし、食卓にはひとつ空席がある。父と子は衝突する。
あるいは智恵子の母親は再婚
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レナードの朝(1990年製作の映画)

3.8

30年間時計の針が止まってしまっていた人々。そしめ、その針を再び動かした人々。

どちらも僕の想像の範疇を超えている。それゆえに、おそろしく、また興味を惹かれる。しかし、製作者もまたその関心と畏敬以上
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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.0

象徴性とか解釈とか、そういうものの貧弱さを感じさせられる

ヤーノシュの誠実さと、エステルによるヴェルクマイスター音律への批判だけが、この物語について考えるための手がかりだが、もはやそんなことさえどう
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裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.8

なにか荘厳なものにふれた感覚
とにかく人物たちの目が、すべてを語りかけてくる。オルガンが、それを形にしてこちらにとどける、畳みかける

ジャンヌの魂は焔に包まれて天に昇っていったというが、群衆の当ての
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バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.4



まず、映画の入りが好きだ。ラジオに流れるメッツファンたちの言い争い。シリーズで3連敗もすれば、望みはない。そのヤケクソとチーム愛とが、くだらないが切実な争いを生む。

そして、朝子どもを送迎してい
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博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

3.8

そのタイトルから連想されるものとは異なり、「博士」は中盤まで出てこないし、物語のいちばんの鍵を握っているとも言いがたい。

そうであるならば、なぜ博士がこの映画の主題として提示されているのか考える必要
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誰も知らない(2004年製作の映画)

4.1

子どもたちの残酷さ、大人たちの無関心

しかし、虐げられ無視されてきたきょうだいたちのなかにもその残酷さと無関心の萌しがある。その邪悪さを、邪悪な世界に苦しめられている彼らのなかにも描きだしているとこ
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シコふんじゃった。(1991年製作の映画)

3.7

とにかく笑った。おもしろい。

一般に、笑えるキャラクターや展開というのは、とても類型的なのだが、しかしそれを丁寧になぞることで、そして、それが組み合わされることで、面白さが出てくる

いまどきとして
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裸足になって(2022年製作の映画)

3.8

シーンの切り替わりのつなぎが、隠喩的であったり示唆的であったりおもしろい。

強い女性たちの物語。いや、強くはないのかもしれないが、ともに生きている。しかし、それぞれの問題をそれぞれに乗り越えるだけで
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水の中のナイフ(1962年製作の映画)

3.9

ヨットの上という実質的な密室空間を創出し、そのシンプルな舞台と、3人だけの登場人物のなかでストーリーを展開していくその設定、脚本の質素で意欲的な構成の巧みさ。
3人の男女は親子のようである。父、母、子
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チャイナタウン(1974年製作の映画)

4.0

フィルム・ノワールというジャンル、あるいはそのパターンを踏襲しながらも、その枠のなかで政治的文脈と個人的な問題とを接続し単なるサスペンスあるいは探偵モノというにとどまらない深みがある。

実際に起きた
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シャイニング(1980年製作の映画)

2.8

原作を読んでいないが、この作品を見ただけで、原作小説の書き手が激怒するに違いないということは理解できる。小説の世界をなすモチーフだけを取り出し、それを好き勝手にバラしたりくっ付けたりして戯れているだけ>>続きを読む

雨に唄えば(1952年製作の映画)

2.8

ショーとしては面白いが、ストーリーは勧善懲悪的であり、面白みに欠く。それは単にわたしがミュージカルの魅力を理解してないことによるのだろうが、早送りしたくなるほどに退屈だった。

この作品は、トーキー革
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パルプ・フィクション(1994年製作の映画)

4.5

ストーリーが複雑なプロットに組み替えられる。時間的な方向性は一貫していないが、オープニングとラストが円をなすように閉じられており、完結性を持っている。この作品はいくつかの犯罪を描いている。そして三つの>>続きを読む

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.6

見終わった後に驚いたのは、これがSFとして扱われているということだった。これのどこがSFだというのか。「異常者」を「治療」し、「社会復帰」させることは、いま平然と行われているではないか。

あるいは、
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ロイドの要心無用(1923年製作の映画)

3.5

笑いどころが多く、スリリングなクライマックスには、瞠目させられるところがある。
ロイドの笑いは、拍手したくなるような笑いである。思わず笑ってしまう、というより、「うまい」「お見事」と言いたくなってしま
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完全なる飼育 赤い殺意(2004年製作の映画)

3.8

 序盤でいきなり殺人がおこり、そこから逃走する過程で、真に物語が動き出す。その「完全なる飼育」小屋に闖入してしまった文也の存在が、その「完全」性を打ち破り、常軌を逸した生活の実態が露わになる。
 そこ
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クローズ・アップ(1990年製作の映画)

4.8

自分自身を演じ直すこと、そこにある救い

https://note.com/tabine_sora/n/ndd6a34be53ab

ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.7

SF的な近未来を描いているのかと思うと、それは人類がいかにして叡智を獲得したかという神話である。音響映像の効果も素晴らしく、最高のアニメ映画と称されるところも首肯できる。切り絵で作られた画面、異世界の>>続きを読む

セブン(1995年製作の映画)

4.1

https://note.com/tabine_sora/n/nc8538e90d742

デイヴィッドが発砲する意志を、何よりも擁護しなければならない。少なくとも、その行為に対する非難を留保しなけれ
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キートンの探偵学入門/忍術キートン(1924年製作の映画)

4.7

いつ最初に見たのだろう。
もう何度も見ている。物語の愉しさ、笑い。

それでいて、映画という新奇の奇怪なメディアに対する批評性のあるユーモアもある。

いや、そんなことはよいのだ。映画を観る愉しさとい
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キートンの大列車追跡/キートン将軍/キートンの大列車強盗(1926年製作の映画)

4.0

天晴れキートン。驚異的なスタント。単純でいながら哄笑を誘う動きの数々。いまなお驚かされてしまう大掛かりな撮影。

架橋が炎上し、機関車が川に落下していくシーンの鮮烈さといったら!

ふるさとのような安
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父、帰る(2003年製作の映画)

3.6

圧倒されるような映像美。雨や海のクリアな水音が印象的な音響。俳優たちの無駄のない演技

しかしそれによって表現されているところのストーリーが腑に落ちない。結局父は何者であったか、彼はなぜ突然島に行き、
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夢二 4Kデジタル完全修復版(1991年製作の映画)

4.1

耽美的な世界観と渦巻く感情と関係、その裂け目に現れるナンセンスな笑い

ロマンティックな世界観のなかにふと現れるユーモア。ロマンティシズムに振り切らない、いや振り切れないのが、鈴木清順の自意識か超自我
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サイコ(1960年製作の映画)

4.4

ふと、魔が差して、それまでまじめに働いてきた女性が、会社の金を奪って逃げていく。その心理のゆらぎ、雨に化かされるようにして旧道の古びたモーテルに迷い込んでいく流れ。そして彼女がそれを悔悟し、家に戻る決>>続きを読む

そして人生はつづく(1992年製作の映画)

4.0

筋らしい筋のないこと。地震という巨大災害に苦しめられていること。山岳の高地の自然の狭間で、人々が暮らしていること。それを見て、きわめて日本的なものを感じ、とても親近感を抱いた。日本的と思われていること>>続きを読む

誓いの休暇(1959年製作の映画)

4.1

戦時下の倫理・人情

将軍の心意気アリョーシャの実直さ、中尉の寛容さが心にしみる
この作品の裏の主題は、戦争に行った男たちを待つ女の人生である。パブロフの妻リーザは別の男を部屋に引き入れている。アリョ
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フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

3.2

短編小説集といった感じをうけた
よくできているし、笑える。面白い。ただそれ以上のものでもない。ふつうの青年たちが歩兵=捨て駒として、仕立て上げられていく過程の悲喜劇を通じて、観るものに印象を残す、とい
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好きにならずにいられない(2015年製作の映画)

3.8

いわゆる「陰キャ」を主役とする傾向は世界的なものであるのかもしれない。だが、この作品は単なる「陰キャ」成り上がり物語ではない。おそらく彼は成り上がってなどいない。ラストシーンは、そんなことがやはり不可>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.7

作品のなかの無駄のなさ、切断・選択をひとつも誤らない作者の眼力・胆力に敬服する。コートに立っている両チーム5人、計10人に加え、監督や控え選手、あるいは観戦する人々それぞれに物語がある。しかし作品とい>>続きを読む

ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

3.3

緊迫の行程
二組の脱北者たちとそれを待つ者の静と動
衝撃的な北朝鮮のプロパガンダの暴露

しかし、それとまったく同じ意味において、この映画もまたプロパガンダである

すべての映画はプロパガンダである、
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人情紙風船(1937年製作の映画)

3.8

町人の粋
翳りをみせる武士という道

粋な死にざま
人情の心中

自殺願望ではない。殺意ではない
死に方の問題ではない
いかに生きるかという道

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.2

静止画の連続が、世界観の奇怪さと奇妙な反復を演出している。

動画は動画が流れていく時間を観るものに感じさせてしまう。静止画であればこそ時間を超越した物語が可能になっているのだ。

それゆえに唯一、ム
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