カトーさんの映画レビュー・感想・評価

カトー

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ラルジャン(1983年製作の映画)

3.8

ロベール・ブレッソン監督の遺作であり、高名な作品。学生のちょっとした軽犯罪の影響が、周りの人間に波及し人生のを破滅させていく。ブレッソンと言えば、役者経験の無い人を出演させる演出が有名ですが、素人特有>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

3.8

何を成し遂げたのかより、どう生きたかが、人生の別れ道となるのですね。ひたすら家族と共にいることを望んだケビン。レスラーとしては、スターとはなれなかったけど、兄弟が次々と亡くなる中で、幸福な人生を送った>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

自分にとって恋愛映画と言えば、フランソワ・トリュフォーなんですけど、あの宿命的な破滅に向かう恋人たちの激しさは、若さでもあり幼さでもあるんですね。今作の男女は、若さというか幼さを残しつつ成長していて、>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.5

たかが映画ではないか。そうは思うものの、原爆の実験成功、原爆の投下の報を聞き、喜ぶ姿を見ることには複雑な気持ちにはなりますね。ノーラン映画の主人公の行動原理は、判りにくいと自分は思うのですが、今作も結>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

上映開始に間に合わなかったのもあるし、途中で睡魔に襲われてしまったのもあるので、作品を理解できているのか分かりませんが、なんとも釈然としない想いになりました。あの夫婦に起きたことは、実際は当人以外は、>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

コメディ要素の要素は面白い部分はありました。ただ、何となくですが監督自身が自分の作風に溺れてしまっているように感じました。これまで作り方に少し飽きが出でいるのでしょうか。今回の映画でそのコメディ要素を>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.8

やはり、どうも好みが微妙にズレる監督の1人だなと認識しました。それは、個人的にとても残念なんだけども。多分、多作で成功も失敗も多いけど、物語の構成がハッキリしている監督の作品が好きなんですね。そうなる>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.9

話題作であり、力作であり、これまで見た事も無い世界観を作っているのは紛れもないのですが、舞台がパリに移ってからのテンポが緩んだあたりから、少し集中が途切れてしまいました。あまりこんな事言う人はいないか>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.0

この映画を見ている時に感じる何かが足りない感覚。その足りないと感じていたものが、あの場面を見た時に、何が必要だったのかが理解でき、圧倒的に訪れます。人が成長していくには、母性も父性も必要ということなん>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

3.7

ビクトル・エリセ監督の作品は、誰もが好きにならずにいられない魅了があるのは、十分承知しています。ただ、自分にとって、あまり深く魅了されることはありませんでした。フィルモグラフィーが完璧すぎて近寄りがた>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.0

それなり主人公の周りでは、大小含めて色々なことが起き、それに対して過剰気味に反応するのだけど、周りの人はあまり気にしていない。身の周りの出来事に対して責任感を感じて損な役割を引き受けてしまう。こんな風>>続きを読む

赤い糸 輪廻のひみつ/月老 また会う日まで(2021年製作の映画)

3.5

デビュー作『あの頃、君を追いかけた 』の頃から変わらないギデンズ・コー監督の特徴は、年齢の割には行動が幼い男子と精神的に大人の女性の数年に渡る男側の一途な片想いというのが基本的なベースで、そこにドタバ>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

規則正しくいつもと同じ生活様式をひたすら繰り返す。まるで、同じことの繰り返しその積み重ねに、何か特別な意味を見出しているかのように。平山の年齢からすると、かなり変わった生き方をしている。年季が入ったア>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

もう、最後の2カットが素晴らしくて、この作品を観られて良かったとしか言えない。なんて、幸福な映画なんだろう。アイロニカルを装いつつ、全てのダメ人間を励ますのではなく、ダメな人生にもそれなりの劇的な事が>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

3.8

映画の始まりは、ジュリア・ロバーツ出演でコメディ要素のある人間模様を描いた作品かと思っていましたが、途中から風向きが変わってきて、変な方向に話が進むなと思っていたら、どんどん話がシリアスになって目が離>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

3.9

色々考えてしまう映画です。主人公三上の根本にある人間性は、悪質では無いのだろう。子供じみた価値観と直情型の性格は、出会う環境や出会うこと人々に適切な教育が施されていたら、もう少しまともなっていたろう。>>続きを読む

最後まで行く(2023年製作の映画)

3.5

平凡な男がある事情から犯罪に関わり、それを隠蔽するうちに後戻りできなくるというプロットは、片山慎三監督『さがす』に近いものがありました。一人の視点から離れてもうひとり別の人物から語られるという点にも類>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

3.9

ホアキン・フェニックスの得体の知れない存在感。軍事の天才ナポレオンを演じるられるのは、今はこの俳優しかしないのかもしれない。内面が全く分からない。愛国者で愛妻家?何を考えているのか分からない演技が、映>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.7

確か映画のセリフだったと思うけど、「良い人間は戦争では生き残れない」と聞いたことがある。戦場では、他人を押しのけて生きることを迷いなく選択できる者だけが生きて帰れた。結果として、そんな行動をしなくても>>続きを読む

戦火の馬(2011年製作の映画)

4.0

何だか、スピルバーグ監督作品の中でどんな点に関しても保留なく好きといえる最後の作品かもしれない。もちろん、最近の作品が質が低いということではなく、単純に好みの問題なんです。「フェイブルマンズ」でも触れ>>続きを読む

スマイル(2022年製作の映画)

3.6

不気味に笑う人というアイデアだけの映画と思っていたけど、それだけで終らない、なかなか凝った作りの映画でした。たしかに、その場にふさわしくない状況下で笑顔で見つめられるのは怖いですね。その表情の裏側に何>>続きを読む

ノーウェア:漂流(2023年製作の映画)

3.7

男性が主人公の過去の作品と比較すると興味深いかもしれません。男の場合、自力で工作して現状打破を目指すのかもしれないけど、赤ちゃんがいて、自分一人だけ脱出できない状況であるので、限界までその環境を使って>>続きを読む

愛に関する短いフィルム(1988年製作の映画)

3.5

隣の家から片思いの女性の部屋を覗くという設定は、公開当時でもかなりきわどい設定だったと思います。たとえ、男の思いが純粋であったとしても。いや、純粋だから余計に引かれてしまうでしょう。ですので、現代的な>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.5

映画としては楽しめましたが、自分の好みかどうかという点では満足できませんでした。誰もがうらやむ才能と権力を持つに至った主人公が、その力を持ってしまったことで、バランスをくずし落ちぶれていく。その様子を>>続きを読む

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

クシシュトフ・キシェロフスキ監督作品は、ポーランドの寒々として、人々が孤立し孤独な雰囲気の中で特異な事件が語られていてそこが好みであったりします。『殺人に関す短いフィルム』は、見ず知らぬ人の生命を奪う>>続きを読む

街のあかり(2006年製作の映画)

3.7

さんざん利用されつくした負け犬が、とことん底辺まで落ちぶれてもそこから這い上がっていくような映画にしないところが、カウリスマキ監督作品らしい。人間の人生なんて、それほど大したものではないけど、それでも>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

3.8

なんだかシュールなエンディングだけど、自由を求めてもそこまで大胆に生きられないダメ男の話なんでしょうね。旅先で出会った二の女性を追いかけて船に乗り込んでからの何とも言えない間と表情が楽しい。結局、どう>>続きを読む

87分の1の人生(2023年製作の映画)

3.5

あまり集中できずに流して観てしまった気がします。誠実な良い作品であることは間違いないのですが、なんだか腹落ちしない部分もありました。自分の不注意による自動車事故により、精神的な錯乱から依存症になった主>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

4.0

不運なごみ収集人の男と同じく不運なスーパーのレジ係の女が、ちょっとしたタイミングから、これまでの取るに足らない人生が変わる。二人とも大した展望も希望も持たないし、生きる術としての能力も高いわけではない>>続きを読む

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

3.5

アキ・カウリスマキ監督の初期の代表作の一本。だんだん成熟していくにつれ、ひねくれたユーモアが噴出してくる最近の作品とは異なり、結構ストイックでした。天安門事件についてのニュースが頻繁に出てきます。あま>>続きを読む

オール・アバウト・マイ・マザー(1999年製作の映画)

4.0

雨の中の事故のシーンがジョン・カサヴェテス『オープニングナイト』のような印象がありましたが、エンディングで映画を捧げられている人の中にジーナ・ローランズの名前が触れられていたので、そういうことかと納得>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.0

『牯嶺街少年殺人事件』より断然好きでした。公開当時に見た印象では、人物が錯綜していて、物語の中に入れなかった為、ガッカリした記憶がありましたが、『 牯嶺街少年殺人事件』よりさらに洗練されていると感じま>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.5

映画が進むにつれて、人物の内面が変化していく構成は、現在の映画制作者の中でも群を抜いていると思います。一見、低俗な人間たちが、別の顔をもち避けることが出来なかった過去に決着をつける。その過程で、その人>>続きを読む

イノセンツ(2021年製作の映画)

3.7

エンタテインメントとして、面白くてとても良く出来てます。大友克洋の『 童夢』も漫画として十分楽しいものでしたし。高級なアート映画を目指していなところが、制作者の賢いところですね。原作への愛情も感じられ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.8

『きみたちはどう生きる 』その言葉をどう捉えるのか?悪意も自己矛盾も含め世界をそのまま受け入れる事なのか。空襲で無くなる命がある。そして、敵国を襲う軍事工事の経営で裕福な家庭環境を送る生活がある。リベ>>続きを読む

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

3.8

今泉監督の独特のサラッとした感触とともに、思春期の男女の純粋さがが加わり、これまでの作風とは異なる広がりを感じました。これまで家族の再生を扱う映画は多く作られていますが、今作は、若者たちの明るい未来を>>続きを読む

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