綾さんの映画レビュー・感想・評価

綾

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ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)

4.4

救われる者と救う者、両者の間に差異は存在しないのかもしれない。救った者はその行為によって、自分を強者/優越者と思いがちだ。故にそこに優劣が発生してしまう。弱者による弱者の救済。優劣など必要ない。救済と>>続きを読む

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

4.0

夢・理想・極彩色、私たちを現実から遠ざけてくれる魔法の装置。子どもの視線は常に想像力に満ち溢れている。同じ光景に毎日異なる物語が追加される。さて、大人の視点はどうだろうか?日々の光景は現実という色に押>>続きを読む

サロゲート(2009年製作の映画)

4.0

生老病死という四苦に付きまとわれる人間は、それを克服することを夢に見る。それは洋の東西を問わずに。機械/技術によってどれは可能なのだろうか?そもそもそれを物理的に克服することは果たして正しいことなのだ>>続きを読む

ブルージャスミン(2013年製作の映画)

4.0

太宰治の『斜陽』は落日の美しさを描いた。しかしこの作品は、『斜陽』の対極をいく。泡沫の夢は所詮、現実にはなれない。人一人さえ乗せられないものにしがみつくことは出来ない。泡沫の飾りは私をどこにでも連れて>>続きを読む

ナイトクローラー(2014年製作の映画)

4.2

物語と報道、フィクションとノンフィクション。正反対に私たちは感じる。しかし忘れてはいけないことは私たちは見たいものを見る、信じたいことを信じる傾向が強いということだ。この一点によりフィクションとノンフ>>続きを読む

4人の食卓(2003年製作の映画)

4.0

私たちは過去を現在から形作る。人類の歴史/過去は現在の視点から見つめたときの解釈を必ず含有する。個人の過去も集団の過去も全ては意味付けの原則からは逃れられない。生物は成長していく。その過程を振り返る際>>続きを読む

アップグレード(2018年製作の映画)

4.0

シンギュラリティやトランスヒューマニズムが興隆している昨今では王道テーマのSF。人類というのは自然を征しようとする歴史を歩んでいる。ヨーロッパと日本の庭で比される人間の自然観。自然とどう共生するのか、>>続きを読む

死ぬまでにしたい10のこと(2003年製作の映画)

4.2

人生の道のりに誰ひとつとして同じものはない。故に人生に甲乙をつけるなんてものは意味をなさない。しかしそれは人生に意味を与えられるのは自分一人だということの裏返しにもなる。大きな物語を信じることができな>>続きを読む

ブルー・マインド(2017年製作の映画)

4.0

近代的な子どもという概念は19世紀に誕生したとかいう。さて子どもと大人の境界線とはなんであろうか?子どもが大人になる為の条件とはなんであろうか?イニシエーションを有効利用して人々は大人と子どもを区別し>>続きを読む

あなたになら言える秘密のこと(2005年製作の映画)

4.0

「A.Tフィールドは心の壁」と言ったのは某有名アニメ。心の壁は様々な形をとって人々の間に存在する。その壁の強度は個人の過去に依存する。簡単にその人をわかる、理解できる、信じるなんてのは幻想だ。深い海ほ>>続きを読む

INFINI/インフィニ(2015年製作の映画)

3.7

プラトンの馬車の比喩が頭をよぎる作品。御者を理性に二頭の馬に気概と欲望を振り分ける。理性の手綱が緩むとき、人は衝動に支配されてしまう。それ故人は愚かになる。そこに人の可能性を見られた場合、我々は滅ぶべ>>続きを読む

仄暗い水の底から(2001年製作の映画)

4.2

個人的に日本で初めて団地というものに焦点を当てたホラー映画なのではないかと思う。バブルが崩壊して約10年経ち、その遺産であるのが団地という集合住宅。人々は近接して暮らしているのにも関わらず、人に対して>>続きを読む

レック(2007年製作の映画)

4.2

個人的には洋画ににおける「パラノーマルアクティビティー」と対をなすモキュメンタリーホラーと評価できる。「パラノーマル」が定点を効果的に使ったモキュメンタリーなのに対し「REC」は動きをメインに据えてい>>続きを読む

エクリプス(2017年製作の映画)

3.8

スペインにおけるホラー映画の傑作「REC」の監督であるパコ・プラサの作品。15歳の少女が大人であることを強いられる。それは少女にとっては責任感による閉塞感、青春を逃すことによる苛立ちをもたらす。心霊現>>続きを読む

アニー・ホール(1977年製作の映画)

4.2

男と女、共に過ごした時間、夢、すれ違い。自分の夢を相手の夢と思い重ね過ごすことは、独りよがりのダンスに過ぎない。男と女のすれ違い。畢竟それにつきるのかもしれない。相手の気持ちの独善的判断。わからないけ>>続きを読む

ダ・ヴィンチ・コード(2006年製作の映画)

4.8

世界の都市伝説における最良のものの1つ。キリスト教における歴史のifを。権力というのは大きくなれば大きくなるほど人々の想像力を喚起させる装置としての役割を十全にこなすようになる。それは物語を生む土壌に>>続きを読む

箪笥<たんす>(2003年製作の映画)

3.5

世界を認識するということは世界を自分の見たいように歪めるということである。純然たる観察や認識はこの世には存在しない。蓋然性の世界が私たちの共通了解として存在しているだけである。自らの後悔が願望が認識の>>続きを読む

ARQ 時の牢獄(2016年製作の映画)

3.5

時間の一回性というのは記憶を担保にしているといっても過言ではない。今日のこの瞬間を私たちは気づかないうちに繰り返しているのかもしれない。それを今という時間にたらしめてるのは記憶という舞台装置だ。時間は>>続きを読む

TAU/タウ(2018年製作の映画)

3.5

完全なAIとは一体何だろうか?人の感情を理解し表現できるAIだろうか?そるはもしかしたら人間側の都合でしかないのかもしれない。感情はないが全てを完璧に計算できるAIの方が完全な存在ではないだろうか?感>>続きを読む

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)

4.0

人はなりたいものになれる。人はなりたいものになれない。人は信じたい物語を信じる。人は信じたい物語を信じないようにする。さて、真実に如何様な価値があるだろうか。深く読む必要もないのかもしれない。楽しめれ>>続きを読む

マジック・イン・ムーンライト(2014年製作の映画)

4.5

見る人によって魔法も霊感も奇術も詐欺もいくようにも姿を変える。所詮人は見たいものしか見えないようにできてる。超現実主義の主人公は魔法なんか全て手品だと。好きな人に首ったけの男は彼女の起こす奇跡は魔法だ>>続きを読む

(1963年製作の映画)

4.0

人は鳥によく憧れている。空を飛べたら、なんて自由なんだろう。嗚呼それは私たちの閉塞感を、現実を感じていないと思っていることにも起因していることだろう。しかし、そこにはある一定の優越感がある。それはあく>>続きを読む

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)

4.5

人は誰しも帰るべき場所を持っている。帰るべき所がないように見える人、繋がりを断たれてしまったように感じる人、そんな人でも、だ。自分が見ないフリをすることで自分の世界に浸ることは簡単だ。それこそ手慰みの>>続きを読む

ターミナル(2004年製作の映画)

4.0

人は1日何人の人とすれ違うのでしょうか?すれ違う人に立ち止まって「ねぇ、あなたの物語を聞かせてくださる?」なんて尋ねたら次の瞬間には自分の人生を警官に話すはめになっているかもしれません。ただその話を聞>>続きを読む

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(1997年製作の映画)

4.0

自然の前で人間は斯くも無力になる。重火器は文明の産物であるから得てして人間の一部と思いがちだが、自然の前には人間は人間でしかない。それを努々忘れないようにすることだろう。

残穢 住んではいけない部屋(2016年製作の映画)

4.5

私的傑作ホラー映画の1つ。妖怪や霊といったものは解釈体系の1つであり、認識にその存在は基づいている。帯を擦るような音をどう解釈するのか。それは物語によって人の認識を変えることで決定する。土地や人間の“>>続きを読む

ミスト(2007年製作の映画)

4.2

完全な闇よりも少し見えることの方が恐怖は増すのかもしれない。目を閉じる、暗闇に置かれる、これは視覚情報が遮断される為、むしろ他の感覚器官に頼ることや、諦めるといった可能性を気づかせてくれる。しかし中途>>続きを読む

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)

4.7

90年代といえばヒトゲノムの解析等の生命倫理の問題が横たわっていた。創造は神の御技であり、人はそこに並ぶことは許さはれないと思われている。それは何によってだろうか?生命の尊さ?宗教的問題?どうしても形>>続きを読む

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

4.0

機械と人は愛し合うことができるのか?王道なSFテーマの1つ。このテーマを観るときに毎度思うのが人間の男の人が機械の女の人に恋をする、とういう設定が多いことだ(印象論なので悪しからず)。ある先輩が言って>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

5.0

「呉爾羅」、「GODZILLA」どちらの名前も神に由来している。ゴジラは神なのか?神を何と定義するのか、それがこの問いで非常に大切になってくる。ここは映画のレビューなので、これ以上は立ち入らない。この>>続きを読む

(500)日のサマー(2009年製作の映画)

3.5

私たちが日常を伴にする上で友人的な概念が“縁”であろうか。私たちは兎に角、“縁”とか“運命”とかいう言葉に弱い。偶然同じ学校で、職場で、barで、私たちは出会いに運命をあてたがる。そうすることで私たち>>続きを読む

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)

5.0

時間はその一回性故に美しい。特に過ぎ去った過去はその輝きを増す。我々は過去を憧憬をもって見つめる。1920年代のパリが現代から見たら素晴らしく見える。それは1920年代当時から見た1890年代もまた同>>続きを読む

インタースペース(2016年製作の映画)

2.0

古典SFに影響を受けた体に見せかけた予算削減なのか予算削減のための古典SFなのか。「2001年宇宙の旅」は1968年から見ていたから凄かったわけであって…
敢えて問題を汲み取るのであれば、人は帰るべき
>>続きを読む

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