花生豆花さんの映画レビュー・感想・評価

花生豆花

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ブルータリスト(2024年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

姪の存在感。故郷を追われ米国にも馴染めなかったとしても約束の地に住む人々を追い出してそこに住んでいい理由にはならない。大事なのは旅路ではなく到達地だとのセリフもこの状況下では残忍に響いた。

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

華やかなシンデレラストーリーから夫捜しのドタバタコメディに変わる中、イゴールの眼差しを通してアノーラの痛みが浮かび上がってくる。振り返ってみればアノーラは利用され尊厳を踏み躙られただけでそこには愛も何>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.8

ポスターがミスリードしてくるけど殺人事件解決ミステリーではない。初見時は夫婦の写真から印象づけてもらったほうが楽しめた気がする。

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.6

映画としては十分面白いのだけど、原爆を作った男の葛藤をエンタメとして楽しむことは広島や長崎で死んでいった名もない人々に対して誠実でない気がした。

ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)

4.5

暴君みたいな女。怠惰で薄情で支離滅裂で自由奔放…良くない所だらけの人間でも離れて見るとチャーミングで滑稽だった。根本的に分かり合えない男とやっていくのは骨が折れるけれど、持ち前の自尊心の高さと向き合い>>続きを読む

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

時間と効率化の鬼みたいなトムハンクスが無人島に流される。島を脱出するでは予想通りだが、戻ってからの展開が渋い。目的地がなくなってしまった後の空白の話。もう息してるだけでいいやと達観した後の道、どっちに>>続きを読む

翔んで埼玉(2018年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

関東圏の内輪ネタ。ほんとくだらない映画だが近隣県の知人の顔が浮かんでめっちゃ笑ってしまう…邦画らしい演技の過剰さもここまで吹っ切れるとアリだった。ちらっと登場する群馬が秘境なところ、麻生久美子がガラの>>続きを読む

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

4.1

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すごいものを観た…アニメ化ということでいくらか端折られているはずで、示唆的な発言もちらほらあって難解な部分が多いのだが、その分からなさが絶妙な具合でリピートしたくなる。
ぞっとさせる描写が上手い。いま
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アンタッチャブル(1987年製作の映画)

3.8

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捻りのない王道の刑事モノ。駅の階段での銃撃戦はかなり見ごたえがある。落ちていく乳母車をキャッチする相棒の得意げな表情がキュートで笑ってしまった。引用元となったオデッサの階段のすごさについては、大学の授>>続きを読む

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)

3.5

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こんなシンプルなストーリーで160分近くやるとは。寒いだとか痛いだとか、彼の生きている感覚を味わうには没入感が必要で、これは家の小さな画面でなく劇場で観たほうがよかった…。

危険なプロット(2012年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

パラサイトでは…?もちろん社会的意味合いとかの作品のコアな部分は全く違うが「家庭教師的な立場で一家に入り込み、脚本と現実が重なっていく」という建て付けがかなり似ていた。あと音楽も。
教師が生徒の週末の
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ミッドサマー ディレクターズカット版(2019年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

通常版で府に落ちなかったところが全部クリアになった。(ダニーがクリスチャンに不信感を抱くわけや、卒論をめぐる突然のいざこざの必要性、何も考えてなさそうなクリスチャンの行動規範…)こっちのほうが完成形に>>続きを読む

ハッピー・デス・デイ 2U(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

マルチバース設定によって、何度も見てすっかり愛着が湧いてしまった悪役寄りのキャラクターたち(主にダニエルとロリ)の救済がなされるのが良い。時空を操るサイエンスのチープさも相まって、前作より軽やかな雰囲>>続きを読む

少女邂逅(2017年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

蚕が少女のメタファー。主演ふたりの程よく力の抜けた演技が良い味出してるが、言葉とイメージが少し説明的に感じた。こういう話は写真と同じくらい寡黙なほうが心地良い、彼女たちが写ルンですで撮ってた写真をもっ>>続きを読む

Vフォー・ヴェンデッタ(2005年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

政治の腐敗。民衆に広がる不安を利用して支持を獲得し、言論統制する様はナチスドイツへの批判であるが、今の日本社会とぴったりと一致するところがあって怖い。

ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

若くして亡くなった俳優の話。下世話にならないように私生活の決定的なシーンを排除したままで、彼の置かれた環境のいやーな部分や苦悩だけを繊細に描いていて、さすがドラン。
ジョンとルパートの2つの物語を書簡
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エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ぺらぺらの美術セット、黒衣、オペラ口調の母親…自伝的なのに「これは作り物です」と言わんばかりの過剰な演出が愉快だった。舞台っぽい違和感満載の表現に意味なんてないのかもしれないけれど、アートでもって現実>>続きを読む

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

母の信じる社会主義を守るためにうそをつく。西ドイツの瓶のラベル貼り替えたり友達とテレビ番組を収録したり、偽物の世界を作り上げていくのが楽しそうだった。映画を作るのに似ている。

HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ(2017年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ティモシーの夏休み。青春ラブストーリーとか成長譚と括りきれないから、見終わった後にあれ?結局なんだったんだろう…となるけどそれが良い。ハリケーンが直撃した後の町みたいに、色んな出来事に巻き込まれて訳わ>>続きを読む

ガリーボーイ(2018年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

貧しくて自信無さげな男の子が見よう見まねでラップしてバトルして、ヒップホップの形式が精神面に影響を与えてくのが面白い。相手の中傷なんか気にしないぜ、これがストリートの声だと社会に対抗していくのが頼もし>>続きを読む

ある少年の告白(2018年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

主人公が厳格な父親の歩み寄りを拒絶するシーンが印象的だった。同性愛は理解できないけどそれはそれでお前を尊重するよ、という父親のポーズ。差別をおおっぴらにできない時代だから、こういうスタンスの人は多いん>>続きを読む

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ぼうっとしていて乱暴で性欲の塊みたいな男が、フィリピンの貧しい女の子を買う…というなかなか大変なストーリーで、二人の愛が芽生えたところで良い感じに終わるんかな?と思ってたら、その先まで責任持ってやるの>>続きを読む

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

シャイニングの次に怖いかも。この悲劇はすべて悪魔ペイモンの仕業として読み解けるけれど、夢遊病だとか妄想だとか、わりと説明可能な精神の錯乱の集積でもある。スピリチュアルな存在よりもむしろ人が狂っていく様>>続きを読む

叫びとささやき(1972年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

人の罪を背負って死に復活する、という流れはキリスト教的だが特に救いはもたらされない。信じるものは救われる訳でなく、うわべを取り繕ったところで欲も猜疑心もそこにある。相手の頬に触れる瞬間だけが純粋な慈し>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

こんなにすっきりした気持ちで観終わるとは思ってなかった。辛すぎるこの世からのトリップ。回って反転して…という映像的な仕掛けと共に死生観や倫理観も揺らいでゆき、村に取り込まれることで救いがもたらされる。>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

伝令ってそういうことね…!1600人の命を救うという壮大なミッションを達成した時のあっけなさと、ひとりの人間の最期を伝える重み。カメラワークでもって徹底的に個人にフォーカスする試みはここに捧げられてい>>続きを読む

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ(2017年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ヴァージンスーサイズとかと比べると見ること傷つけることの主体が女であるという点で共感しづらいし動機となる感情も全然深掘りされないのは期待外れなんだけど、そもそも女が男を加害するときの動機って愛憎や狂気>>続きを読む