kamaさんの映画レビュー・感想・評価

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痴人の愛 リバース(2024年製作の映画)

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実に親切な構成で、描写が明快。ときに、単調かつ歪な画面に秩序的構図が現れるものだから、その緊張感含め小気味好い。ライトに纏まった一品。

悪は存在しない(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

終わるんじゃあないぞ、そうだ、終わってはならんぞ── そう念じるまま、予期していた通り終幕を迎えてしもうた。全く以てニクい趣向である。作品への没入感は無駄の削ぎ落とされた真実性によるものだ、そう言うこ>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

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法廷劇というより家庭内の人間ドラマといった作風か。回想場面を含め、視点の奥行き(カメラワーク)が最大限に活用され、「共感性」という一種の作用が右往左往。論争場面なんて、もう個人的には聴くに耐えないくら>>続きを読む

コットンテール(2022年製作の映画)

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家庭の軋轢と、贖罪からの和解、そして継承をも描き出す本作。イギリス湖水地方の風景は言うまでもないとして、極端なカメラワークやイメージを繋ぎ合わせるカットの数々は、ラストに至るまで危うさを孕んだ美しさを>>続きを読む

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)

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この手の生活と人生とを重ねて見せられることには滅法弱い。それぞれの「生」のかたちと「死」との距離感。光の織り成す美しいカットと画面の湿度はまさに夏であり、その季節こそが生と死のあわいであるのだ。

雨月物語(1953年製作の映画)

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描かれるのは小泉八雲が惚れ込んだ日本的怪異そのものであろう。京マチ子の演じる死霊像も、泉鏡花『高野聖』などと重なる「女性の恐さ観」が垣間見えて面白い。幽玄に迫る作品であった。

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

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世間の声ごときでガタガタしちゃあいけない!
名声だのは投機的な賭けの結果にしか非ず。
贅沢を言っちゃあいけない!

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

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主人公コットのレジリエンスが題材。あくまで子供としての、その両眼に備わった目線、これを逸しない点が見事なものである。それ即ち本作の肝所であって、「見せない部分」が我々の意識を吸い寄せ、文字通り最後まで>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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入水は胎内への回帰、文字通り生まれ変わった女性を主に据えて「野生としての理性」という新しい且つ面白い提案。
この野生-理性のバランス感覚が愉しいのであるが、その多大なる危うさはお誂えの成長譚に覆われて
>>続きを読む

アンダーグラウンド 4K デジタルリマスター版(1995年製作の映画)

5.0

日曜日の朝っぱらからだ、凡そ三時間を圧倒的密度で投げつけられる本作。座席のだいぶ埋まっていたことに驚いた。皆、同志と言う他あるまい。

ゴーストワールド(2001年製作の映画)

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イーニド、或いはシーモアにはなれなかった、と言うよりそんな生き方ができなかった学生時代を過ごしたからだろうか、彼女らをどこか羨ましく感じた。俗世との折り合いはつけるべきなのか否か。答えは出さず仕舞い。

枯れ葉(2023年製作の映画)

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撮り方がどこまでも粋だった。色味のまとまりと、時と空の間で魅せる距離感。奥ゆかしさは何処と無く日本的な感性にも見えた。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

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紛うことなき大作。映画という一種のナラティブが成立している。歴史の暗部に切り込む社会派の本作は、現代にも通ずる人間のおぞましさを捉え、その視点もまた秀逸である。主となる人物らの捻れた関係性(名実ともに>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

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前作『一グッチ』と同様に画面の作り込みには目を見張るものがある。終始、顔の中心で光と影とに別れるホアキン・フェニックスの表情、衣装にロケーション、繊細なアングル。"画"に対する信頼感が凄まじく、これぞ>>続きを読む