香さんの映画レビュー・感想・評価

香

スワロウテイル(1996年製作の映画)

4.5

迸る凄まじいエナジー。

無国籍的なイェンタウンへの作り込み、役者陣の入れ込み、カメラワークにサントラ、どこをとってもとにかくパワーに満ち溢れていて、この湧き立つクリエイティヴィティの泉の勢いにまず圧
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バッファロー’66(1998年製作の映画)

3.8

「若く綺麗な容姿をしていて賢く、適度に危うさもあって、何より男性を包み込む圧倒的な母性を持ち合わせた女性」という男性の欲望剥き出しみたいなキャラクターをクリスティーナ・リッチが完璧に演じている。

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恋する惑星(1994年製作の映画)

4.7

ウォン・カーウァイ特有のシャッタースピードを遅らせたカメラワークもさることながら、とにかくカメラアングルが良すぎる。

金城武が電話でいろんな女にナンパする際に15度ほど傾いたカメラ、パイナップル缶を
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マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

3.3

とにかく出演者が豪華なので画の力が強い。しかも今最も旬な人々が沢山キャスティングされてるので、強力なだけでなく新鮮さもあってそのバランスがとても良い。どんなにストーリーが弱くてもそれだけで観ることがで>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

1.7

観るに耐え難い苦痛。こういう拷問。

不可解なストーリー、悪趣味な画、冗長な展開、ヒステリックに怒鳴り散らす演技、意味深だが的を得ない台詞、誰にも感情移入できない登場人物、思いつく限りの人を不快にさせ
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.6

息づいている。人々がその画面の向こうで生きているのが分かる。

“それ”を除けばごく普通の生活ができるはずなのに...何気ない日常を何気なく過ごすのはとても大変で、山添くんと藤沢さんは“それ”から逃げ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

エマ・ストーンの俳優としての実力、魅力にまず割れんばかりの拍手を。単に言葉が通じず動きが制御できない幼児期だけではなく、幼児ではないが思春期でもないような微妙な過渡期をも含め演じきっているところが本当>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

3.8

個人的には最後の火の玉ストレートなネタバラシはないほうが味があって良い(バラさなくても答えは明確だから)とは思いつつ、これがあるからめちゃくちゃバズったのだろうとも。

最後に一斉伏線回収!な構成自体
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ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

5.0

考えるな、踊れ!

今もなお全く古さを感じさせない…どころか未だ追いついていないとすら感じさせるほどに洗練された映像と演出。トーキング・ヘッズとサポートメンバーが織り成す最高の演奏。こんなの完璧すぎる
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.9

搾取と虐殺の歴史を、権力なき加害者の視点で描く。主人公がキングでもモリーでもないのがポイント。ただただ強く大きいものに巻き込まれ、特に抗うこともなく流れに身を任せるアーネストだからこそ、今起こっている>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.7

一つ一つの所作に意味がある。いや、正確には意味を“付与する”。ルーティーンとは、何か自分の行動や信念に一つの合理性を“付与”し(本当に合理的かは関係ない)、自分自身をまず納得させるためのもの。儀式とす>>続きを読む

マーベルズ(2023年製作の映画)

3.6

アクション映画としてはかなりシンプルに楽しめた。
特にマーベルズが立ち位置を変えて戦うというワンアイデアがかなり効果的で、個人的にはGotG3のクライマックス以上にアクションシーンを楽しむことができた
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オオカミの家(2018年製作の映画)

-

「なぜそこまでやるのか?」映画館でそんなことを思ったのははじめてかもしれない。

一秒単位であらゆる画が動く。モノが動く、形が変わる。静止してるように見えるものも何故か動きがある。クシャクシャクシャ…
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バービー(2023年製作の映画)

4.0

端的に言うと本作は「記号」の物語である。

生殖器のないバービーとケンはただの人形であって、飽きられたら捨てられる。ケンに至ってはバービーありきのキャラクターで家すら持たない。
憧れの対象でありながら
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.5

あえていうとジブリ版「ふしぎの国のアリス」?
テーマはあるけどストーリーはないというタイプの作品で、総じてやや難解というか説明不足で物語が進行するものの、場面ごとで何を言いたいのか或いは何のメタファー
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ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

DCとエズラ・ミラー、起死回生の一発!

作品テーマから最後の着地地点までMoMと近しいものがあが、続きものを前提としたMoMの一部釈然としなかった場面などと比べると、本作はここから始めてさらに終わら
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リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

3.6

多様性を意識したキャスティングはしていないと監督は言っていたが、間違いなくしてるし(そもそも監督が自らいろんな人種を採用するようにしましたなど言うはずがないのだ)、だからこそのエリックが女王の養子とい>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.6

命とプライドを賭けた140分のアートと呼んで差し支えないだろう。人間が持つ技術と感性の限界を楽しく美しい形で突き詰めた、ポップアートの頂点。

キャラクターデザイン、構図、展開その全てが想像を遥かに超
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Rodeo ロデオ(2022年製作の映画)

3.5

冒頭十数分のバイクへの熱烈な欲求、そしてバイク乗りの刹那的な生き様。
疾走感に溢れた作品を期待してみると、後半の陰鬱とした雰囲気に面食らうことになるだろう。

バイクに全てを懸けること、警察に追われ命
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M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)

3.7

不気味の谷ラインに留めた絶妙なキャラデザと、それでいて容姿端麗、頭脳明晰、歌ったり踊ったりする不可解でキャッチーなリアクションなど、M3GANのキャラクター設定がめちゃくちゃアイコニック。

程よいホ
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怪物(2023年製作の映画)

3.7

ホラーやミステリーの匂いがした予告編とは打って変わって、ここはやはり是枝監督×坂元裕二脚本の作品というべきか、しっかりと人間ドラマである。

特にキャンセルカルチャー、視点次第で全てが変わる善と悪の概
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.0

何かの大きな枠に呑み込まれない。ボクシング映画だけどスポ根モノではない(勝敗は大事じゃない、大事だけど)。可愛さを押しているわけでも捨てているわけでもない(ストイックに練習に励み、ネイルをする)。
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AIR/エア(2023年製作の映画)

4.0

現代どころか当時でもそうなかったであろう(“負け犬”といってもあのナイキではあったわけで)、部門と自身の雇用をかけて一人のプレイヤーに全ベットする物語。
会社に泊まり込み、信頼し合える数人の仲間と逆境
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

一狩りいこうぜ!(私刑的な意味で)

世の中は無罪or死刑、究極の二択のみ。果てしなく寛容でありながら極端に不寛容でもあり、告発したものが勝利、指を刺されたら人生終了、受け取り方も様々で多様性という言
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

4.1

娯楽体験として最高品質の映画だと思う。

ワンカット(アニメーションだけど)で展開される横スクロール、団子状態のなか直感的に勝ち筋を探すカートレース、頭でなく体で覚えていくステージ構成。

世界観やバ
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

まず「Creep」とロケットのマッチ度の高さ。まるで彼のために書いたかのような歌詞!

GotGシリーズのラストとなる本作では、ファンの期待に応えるべく主要キャラクターが大活躍。アホなやりとりからカッ
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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

-

点数はつけられない。

デヴィッド・ボウイのクリエイティブの原動力は、その時代のカオスと自分が身を置いている環境にあって、音楽性はそこに付随して生まれ出る副次的な要素である。

本作は一応、時系列を追
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.7

もう明らかに全国300館以上でかけてほぼ満席になるような大衆作品ではないわけで、評価軸をどこに見据えるかによって賛否がかなり分かれてくると思う。

とはいえ、シン・ウルトラマンで顕著だった女性へのフェ
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

4.1

No hearing or breathing
No movement, no colors
Just silence

食人というサイコ度の高いホラー要素がテーマにありながら、観ていてそこにあまり強
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バビロン(2021年製作の映画)

3.1

そびえたつ豪華絢爛な無用の長物……辛辣だが率直な意見を述べるとすればこうかもしれない。

この作品に込められた一番のメッセージは、映画の大切さや尊さというかはチャゼルの「俺もこの大きなものの一部になり
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.5

スピルバーグが映画を心から愛していることが分かる自伝的映画、と書くとなんとなく「ニュー・シネマ・パラダイス」のような作品を想起させるかもしれないが、そういった感動的なノスタルジーを期待すると完璧に肩透>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.8

マルチバースを巻き込んだ家族バトル。壮大な世界観を打ち出しつつも、本作のテーマは家族や自分の選択に対する愛、肯定感だ。

自己愛や他者愛…すなわち、「紛れもないこの自分」が生きてきたことを肯定すること
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

3.6

普通に面白くてめっちゃ悪いところなどはないのだけれど、かといって良かったところも特に思いつかず、率直に言ってしまうと「なんで作ったんだろう?」感の強い作品。

本作の最大の特徴はほとんど全編にわたって
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

4.0

何といってもギョッとするのが192分という驚異的な上映時間だが、体感としては「長いが、全く退屈しない」と言うのがピッタリ。というかこれは…新感覚モキュメンタリー?舞台が森から海へと変わり、海と共に生活>>続きを読む

マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル(2022年製作の映画)

4.1

ジェームズ・ガンの唯一無二の遊び心と感性が爆発するクリスマス・ムービー。
ヨンドゥ役のマイケル・ルーカーも声のみの出演になるが登場、順調に成長を続けるグルートや順調にGotGの一員に馴染んでいくネビュ
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.8

祈りのような作品と言えるだろう。

朝が来て家族や大切な人にいってらっしゃい、いってきますを言うための祈り。
親しい人やそうでない人と会って、ご飯を食べたり会話をしたり、ありふれた日常を過ごすための祈
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